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発信力を強化した第2次安倍内閣

政治家

※画像はイメージ

 第1次安倍内閣と比べると、第2次安倍内閣は比べ物にならないほど発信力を強化しています。政権を動かすことができる与党には情報が集まりやすくなるため、新聞・テレビが与党の動静に注目するのは自然です。2009年の衆院選で敗北した自民党は野党になり、辛酸をなめました。新聞・テレビから見向きもされなくなったため、自民党は政権奪還に向けて情報発信の強化に乗り出します。

 しかし、新聞・テレビは野党には容易に振り向いてくれません。その際に自民党が着目したのが、自分たちで情報発信ができるインターネットでした

 現在は、ツイッター・フェイスブック(FB)・インスタグラム、YouTubeなど、政治家や政党がインターネットで発信することは日常的になっています。しかし、2009年の時点でインターネットにそこまで訴求力はありません。

 公職選挙法でも選挙期間中に文書・図画を配布することは規制されていました。文書・図画という堅苦しい言葉なのでわかりづらいのですが、平たく言えばビラやチラシ、ポスターなどを配布する行為に大幅な制限があったのです

橋下徹氏のツイッターでなし崩し的に解禁

 公職選挙法には明確にインターネット等を禁じるとは書いていませんでしたが、HPの更新やツイッターによる発信、政治家がFBへ投稿することなども文書・図画の配布と同等の行為と解釈されていました。それゆえに、政治家や政党によるインターネットの発信が選挙期間に突入すると皆無になっていたのです。

 2012年の衆院選から、情報発信の主軸はテレビ・新聞からインターネットへと移っていきます。そのきっかけになったのが、大阪市の橋下徹市長(当時)です。橋下市長は選挙期間中にも関わらずツイッターを頻繁に更新していたのです

 当時の橋下市長は日本維新の会の代表でした。橋下市長のツイートは自党を応援する内容だったので、公職選挙法に触れる可能性がありました。しかし、お咎めはありませんでした。橋下市長のツイッターを機に、選挙期間中におけるインターネットでの情報発信はなし崩し的に解禁されたのです

 橋下市長が禁を破った2012年の衆院選は、自民党が改選前議席176から 294議席へと大幅に増やして勝利を収めます。そして安倍内閣が発足。安倍元首相は、その後も発信の強化に努めます。如実に発揮されたのは、官邸で実施される首相会見です。

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