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岸田首相はなぜ「聞く力」を強調するか?背景には「脱アベ政治」の意図も

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フリーランスの記者が指名されなくなった

 プロンプターの導入と同等の効果を発揮したのが、記者との質疑応答です。鳩山・菅・野田の3首相の会見では、フリーランスの記者も指名されて、質問できる機会がありました。

 ところが、安倍元首相が就任してからはフリーランスがどんなに挙手をしていても、指名されることはありませんでした。これは、たまたま指名されなかったわけではありません。なぜなら、2020年3月2日の参議院予算委員会で安倍元首相自身がそう明言したからです。

 官邸報道室は、内閣記者会に所属する記者から事前に質問を取りまとめて模範解答を作成していました。事前に質問をとりまとめていない記者に質問をさせてしまうと安倍元首相が回答に窮してしまう可能性があります。

当初は自分の言葉で語ろうとしていた?

菅義偉元首相

当初、菅義偉元首相はプロンプターを使わずに会見していた

 こうした事情から、安倍元首相の記者会見ではフリーランスは指名されなかったのです。見た目ではわかりませんが、明らかに出来レースだったのです。安倍元首相本人が出来レースであることを暴露してしまったので、以降の首相会見はフリーランスも指名されるようになりました。

 そして安倍元首相が退任。菅義偉元首相へ交代した直後は記者会見にプロンプターは導入されませんでした。その理由は定かではありませんが、菅首相がプロンプターに慣れていなかったからとも安倍政権の反省を活かして自分の言葉で語ろうとしたから、とも言われています。

 しかし、菅首相元の記者会見でも、すぐにプロンプターが常備されるようになりました。さすがに記者から質問を事前に取りまとめることはありませんでしたので、菅元首相が記者の質問に答弁に苦慮する場面は以降も見られました。

<TEXT/フリーランスカメラマン 小川裕夫>

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある
Twitter:@ogawahiro

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