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岸田首相はなぜ「聞く力」を強調するか?背景には「脱アベ政治」の意図も

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民主党政権の発足で「開かれた」記者会見に

 官邸で実施される首相会見は、2009年に民主党政権が発足するまで内閣記者会の記者しか参加できませんでした。内閣記者会とは、官邸会見を主催する記者クラブのことをいいます。記者クラブとはNHKをはじめ新聞各社や民放各社で構成される任意団体で、官邸だけではなく財務省や総務省といった中央省庁・県庁・市役所・警察にもあります。

 また、官公庁のみならず経団連といった経済団体にも記者クラブがあり、そうした記者クラブが記者会見を主催するのが慣例になっていました。記者クラブはNHK・新聞各紙・民放各社が加盟し、雑誌・インターネット・フリーランスの記者は加盟できず、ゆえに記者クラブが主催する記者会見にも参加できません。

 民主党政権が発足すると、雑誌・インターネットの記者にも門戸が開放。また、フリーランスの記者も参加できるようになったのです。私も2009年の鳩山由紀夫首相の官邸会見から断続的に参加している記者の1人です。

安倍政権に変わったときの「ある変化」

安倍晋三元首相

安倍晋三元首相の官邸会見から、プロンプターが設置されるようになった。ガラス板のようなものがプロンプター

 ほかの省庁とは異なり、官邸での会見はペン記者とカメラ記者が厳格に区別されます。ペン記者は首相に対して質問できますが、写真や動画を撮ることは認められていません。他方、カメラ記者は写真・動画を撮ることは認められていますが、質問はできません。

 官邸での首相会見に参加しているフリーランスの記者はペン記者ばかりで、カメラ記者はこれまで私1人しかいません。10年以上にわたり官邸に通い続けて首相を撮り続けてきた私ですが、民主党政権から安倍政権に変わったときに、ある変化に気づきました。

 それまで鳩山由紀夫・菅直人・野田佳彦の3首相は、官邸会見室の演壇に立って会見をしていました。それは、安倍政権になっても変わっていません。大きく違っているのは、就任後からプロンプターと呼ばれる機器が演壇の左右に各1機ずつセッティングされていることです

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