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日本の「地方テレビ局」が消える?在京キー局とも異なる問題点とは何か

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ローカル放送局は「地元発信」に注力すべき

ローカル

各ローカル放送局のさらなる独自の情報発信に期待大です

――最後にローカル放送局のあるべき姿を、樋口さんの目線で教えてください。

樋口:ローカル放送局を語る際「生き延びれられるか」といった論旨になりがちですが、ここまでに紹介した通り、ローカル放送局の収益構造が番組制作のインセンティブにつながっていません。前述の通り、ローカル放送局が収益を究極に考えると「独自のコンテンツは作らないほうが良い」ということになります。これは良くないです。

 やはり本来のあるべき姿である、その地域でしか発信できない情報、地元の人たちにとって身近な情報はもっと発信していってほしいと思っています。偉い人たちが「国は安全か、そうでないか」を議論することももちろん大切です。しかし、地元にとっての切実な問題は「住んでいるこの場所が、今安全か、そうでないか」です

 こういった物理空間ならではの情報を発信できるのもやはりローカル放送局にしかできません。この点は今後、さらに注力していってほしいと思っています。

<取材・文/松田義人>

【樋口喜昭】
1971年、カナダ・エドモントン生まれ(宮城県仙台市出身)。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程修了。博士(ジャーナリズム)。東海大学文化社会学部広報メディア学科特任教授、タルタルビジョン代表取締役。専攻は放送史、メディア技術、映像制作など

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

日本ローカル放送史

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放送と地域の近・現代史を実証的に描き、今後のローカル放送のあり方を指し示す

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