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日本の「地方テレビ局」が消える?在京キー局とも異なる問題点とは何か

ビジネス

ローカル放送局は番組制作しないほうが儲かる?

――お金まで一緒についてくる! ……そうなんですか?

樋口:例えばキー局だと、広告(テレビCMなど)で収益を得て、その中でコンテンツとなる番組を制作します。そのためには番組の視聴率を上げ、その間に挟むテレビCMの価値を上げる必要があります。

 ところが、ローカル放送局は、こういったキー局が作った番組を中継することで、キー局から放送料を取り、それがそのまま収益に繋がります。下手にローカル番組を作るぐらいならキー局の番組を流しておいいたほうがお得ということですね。

 とはいえ、ローカル放送局のもともとの成り立ちが、「キー局の寡占状態を防ぐ」「地域発信のメディアを作る」「地域発信ではの報道、地域住民に有益な情報を提供する」という理由で免許を与えられてきました。これらをまとめると、ローカル放送局はお金のことだけで言えば「独自の番組を作らないほうが売り上げが上がる」とも考えられ、前述のような「成り立ち」とかけ離れてしまっていることもあります。これは残念なことです。

地元の修学旅行生の安否をテレビCMで流す

ローカル

ローカル放送局の収益だけを考えれば「番組を作らないほうが良い」ということになるそうです

――樋口さんとしては、本来のローカル放送局のあり方だった「地域発信のメディア」として、オリジナルの番組をどんどん作ってほしいという思いがあるんですね。

樋口:はい。例えばキー局はもちろん全国的には全く知られていなくても、ローカル放送局の中で、「地元の人しか知らないアナウンサー」がすごく人気があったりすることはすごく面白いじゃないですか。前述の通り、収益だけを考えればローカル放送局は「何もしない」ほうが良いかもしれませんが、ここは各ローカル放送局に力を入れて取り組んでほしいことと思っています。

 ところで、ローカル放送局には面白いコンテンツもあって、その一例なのですが、秋田の中学生が修学旅行で、家からどこかの町に行くと。親御さんにしてみれば大事な子どもが本当に無事に過ごしているか、安全に過ごしているか心配なわけですよ。そういった親御さんの思いを反映させて、ローカル放送局のテレビCMで「修学旅行の安否を流す」という取り組みを行っています

――テレビCMなのに、中学生の修学旅行の安否が伝えられるんですか。

樋口:そういうことです。スポンサーの名前と一緒に「〇〇中学校修学旅行団 1日目は上野の国立博物館で観覧中です。ご安心ください」といった情報が伝えらます。「うちの子ども大丈夫かな。でも、修学旅行の様子がテレビCMで流してくれた。安心だ。これを流してくれた企業は素晴らしい。買おう!」ということになると思いますが(笑)、こういう試みはローカル放送局ならではで、すごく良いなと思います。

日本ローカル放送史

日本ローカル放送史

放送と地域の近・現代史を実証的に描き、今後のローカル放送のあり方を指し示す

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