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珍しい工事用車両が見られる「鉄道技術展」ルポ。最新技術が一堂に

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共同開発された小型軌陸自動車の実力

 そこでアクティオとJR東日本水戸支社は、効率的かつ配送用ドライバーを不要とする小型軌陸自動車を共同開発した。人員も5、6人から2人に減るという。

 鉄道車両の改造車でいう種車は、ホンダの軽トラック。狭い踏切でも線路に載せることが可能なので、機動力がよい。

鉄道技術展

小型軌陸自動車の後輪と転車台

 踏切から鉄道の線路を走らせるには、まず小型軌陸自動車内に装備されている転車台(ターンテーブル)を下ろしたあと、車体を浮上させ、かつ線路方向に向けて回転する。次に線路を走行するための鉄輪を線路に載せる。特に後輪は補助輪を加え、タイヤに直結することにより、その動力で鉄輪を駆動するため、複雑な構造だ。

 その後、転車台を格納し、アクセルペダルを踏むと線路上を走行できる。無論、ブレーキも車両のペダルと連動している。

 黒田大士鉄道事業部事業部長によると、2019年度は耐久テストを実施してから正式に導入する予定だったが、2019年秋に発生した台風15・19号の影響で、JR東日本水戸支社から「本線に載せて使いたい」という連絡があったという。

 当初の予定を早める形で実際に使用すると、「非常に乗り心地も良く、安全性に、快適性に軌道の点検ができる」とお褒めの言葉を頂戴したそうだ。黒田事業部長によると、ほかのJR各社も「使いたい」という要望があり、レンタル、販売のいずれかにするかについては今後協議するという。

鉄道技術展

日本の鉄道軌間は、1372ミリ(写真左の京王電鉄など)や762ミリ(写真右の三岐鉄道北勢線など)も存在する

 今のところ、狭軌(1067ミリ)用のみ開発されており、今後は標準軌(1435ミリ)用などが開発されるのではないだろうか。

参考出品された2つの作業車も公開

 アクティオは小型軌陸自動車のほか、参考出品として2つの軌陸作業車を展示したので、御紹介しよう。

・軌陸高所作業車 TC牽引載線(仮称)

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実用化まで、あと少し(提供:アクティオ)

 アイチコーポレーションと共同開発をした車両で、日本車ながら走行装置にスウェーデンのメーカーを採り入れた。将来は7.5トン車も導入する予定だという。

 特徴は車両の回転に人力を不要することで、載線(車両を線路に載せること)に必要な転回専有面積がより小さくなった。特に曲線上の載線も安全性が向上した。

 また、転車台が不要になることで、機器が簡素化。日本の排ガス規制をクリアするため、油圧ポンプを導入した。2020年度よりレンタル品として提供予定だという。

・軌陸両用自走式高所作業車 LWU09-Mk1

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電化路線にうってつけの新型軌陸両用自走式高所作業車

 こちらもアイチコーポレーションと共同開発をした車両。これまで架線より上で作業するには、旋回してブーム(伸び縮みする部分)を伸ばすしかなかった。

 軌陸両用自走式高所作業車 LWU09-Mk1は、ブームの位置をずらすことで架線をかわすことができる。山間部では木の伐採が容易にできるので、架線への接触などを防げるほか、鉄塔の点検も難なくできる。

 また、作業時間の確保などの観点から、現場近くに留め置くことが可能で、機材搬入の時間を短縮できる。作業の安全性と効率を両立させ、作業範囲も広がった。なお、今回取り上げた車両の開発費は、いずれも5000万円以上だという。今後もアイチコーポレーションと共同開発をしてゆくそうで、鉄道保守や点検の向上につながる商品開発に期待したい。

 記者発表会終了後、各メディアは自由にまわって取材を行なう。さすがに1日ですべてをまわり切るのは困難なので、私が注目したところをピックアップしてみよう。

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