“ソース離れ”の若者を狙う「ブルドックソース」創業110年目の挑戦
日々の食卓を彩る料理に欠かせない調味料。なかでもとんかつ、たこ焼、お好み焼に欠かせないソースの代表格といえば、ブルドックソースだ。そんな創業110年を超える老舗企業は2021年、新たな転換期を迎えている。
今年1月には東証一部上場を果たし、2月に発売した「Jソース」では“ソースの常識を覆す”と大胆な打ち出しを行った。ブルドックソース株式会社の執行役員経営企画室長を務める鈴木美奈子氏に、今後の展望を聞いた。
濁点を省いた「ブルドック」にしたわけ
三澤屋商店(ブルドックソースの前身)は1902年に創業。明治初期の文明開化により、西洋文化が次々と日本へ入ってきた頃、ソース発祥地のイギリスでは、ブルドッグがシンボル犬として愛されていました。日本でも当時、ブルドッグがペットとして人気を集めており、創立者・小島仲三郎氏が「ソースのおいしさもブルドッグと同様に広く愛されるように」と考えたのが由来だという。
「味噌や醤油は日本人の食卓に根付いていましたが、外国から入ってきたソースは真新しく、日の目を見ない状況でした。一方でカツレツなど西洋料理も日本に入ってきていて、ソースをかけることで美味しく食べられるということを、世に広めたかった心情がありました」
ここでひとつの疑問が浮かび上がる。犬の名前は「ブルドッグ」という呼称なのに対し、ブルドックソースは濁点がない「ブルドック」。「これにはちゃんとした理由があるんですよ(笑)」と鈴木氏は説明する。
「もちろん、単に『゛』をつけ忘れたのではなく、発音を意識してブルドックという名にしているんですね。ブルドッグだと、語尾の濁音が発音しにくく、親しみにくさが感じられることから、創業者の小島が濁音をなくし、「ブルドックソース」という形で世に出したんです」
強面のトレードマークは100年以上変わらない
また、ブルドックソースのトレードマークである犬のイラストもインパクト大だ。少し強面に感じながらも、ブランド想起という観点ではユニーク性を持っている。
「1世紀以上続く長い歴史のなかで、パッケージは変化しておりますが、ブルドッグの犬のイラストはほとんど変わってないんです。唯一、創業100周年を迎えたタイミングで、顔のしわを少し綺麗に整えたくらいで根本のデザインは今も昔も変わらないです(笑)。顔と名前、そして安全・安心な商品をずっとお客様へ届けてきたことが、ソース業界のリーディングカンパニーとして支持されてきたゆえんと考えています」
こうして、食文化の発展に合わせてブルドックソースも、日本人の家庭で愛用されるようになったわけだ。