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無人コンビニを作った男が語る「僕が保険証のために起業した」理由

ビジネス

保険証を手に入れるために会社を設立

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コンピューターサイエンスの学位を持っているので、無人コンビニのプロトタイプは自作

――保険証ですか?

久保:妊娠中、3週間に1回程度は病院に行かなければいけないので、健康保険をしっかり切り替えないと保険証のないタイミングがあるんです。実費を払えばいい話なんですが、妻から「保険証はちゃんとほしい」と言われて。

 やる気満々で起業したというより、保険証を手に入れるために比較的軽い気持ちで会社を作ったという感じですね(笑)。10月までは会社自体何も動いていなくて、できたことといえば保険証で病院を通えるようになったのと、黙々と部品を集めて無人コンビニのプロトタイプを一人で作ったくらい。

――それが、設立してから1年半で社員数17人にまで急激に伸びたというのは驚きです。成長の秘訣はなんだと思われますか?

久保:ウェブペイが買収された時には社員数7名だったので、早々に倍以上の規模の会社になっています。

 起業も4回目なので、最初の立ち上げ時に何をすればいいのか分かっていたというのと、LINE Payでの事業経験を経て、「経営者のあり方」を見ることができたというのが大きいと思いますね。

「スゴく視野が狭かった」と感じる

久保:LINE Payに在籍していた頃、代表取締役社長だった舛田淳さんの経営者としての振る舞いを見る機会がありまして。学生起業だった私はそれまで自分なりに試行錯誤してきたけれども「スゴく視野が狭かったな」と感じたんですよ。

 今回の起業では、経営者として何をするべきでどういうところに落とし穴があるか、どう組織を作っていって、社員にどのように活躍してもらうかというのがある程度見える部分がありました。

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上手くいかないクラウド事業を続けていた時は本当に辛かった

――起業する際に大切な心構えを教えていただけますか。

久保:起業は金銭的なメリットも精神的なメリットも大きいんですが、やっぱり大変だなと思います。意義はありますが、決して楽ではありません。

 LINE Pay時代にも、共同経営者の方と「もう起業はいいよね〜」という話をしていました。結局、健康保険証のために会社を作ってしまったんですが(笑)。

 まあ、私の場合、無人コンビニってスゴく面白いので、湧き上がる興味を抑えきれなくてのめり込んでいるうちに“無人コンビニオタク”になってしまったという自覚があります。楽な道を歩まなくていいから、挑戦してみたい。そういう人にとっては、起業に関してのサポート環境も整っているし、いい時代だと思いますね。

<取材・文・撮影/小泉ちはる>

ライター/漫画家。キャリア、ビジネス系の記事から映画のコラムまで幅広く手がけています

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