自分自身がスマホに飲み込まれ、アプリになる気がした……ふかわりょうが実践した「スマホを持たない旅」
自分自身がスマホに飲み込まれ、アプリになる気がした
繰り返しになるが、ふかわさんはスマホを否定するために本書を綴ったわけではない。ただし「スマホで知る・感じることが全てではなく、小さな画面とはまた違う面白い世界もあるのだ」ということを紹介できないかと「スマホなし旅」を実践し綴ったというものだ。
本書のコンセプトは、ふかわさん、担当編集者双方が当初から同じ思いを抱き企画に至ったという。ふかわさん、そして担当編集者に話を聞いた。
「かつて、携帯電話を手にして、その利便性を実感する一方で、むしろ人間の方が『携帯』されている気がしました。やがてスマホが登場すると、やはりその利便性を実感する一方で、自分自身がスマホに飲み込まれ、アプリになってしまう気がしました。
もはや、スマホなしには生活に支障を来たすほど手放せなくなってしまった結果、この小さな窓からだけではなく、他の窓からも世界を見たくなりました。スマホで埋められた隙間から、どんな世界が見えるのだろう。そう思ったら、スマホを置いて、旅をしてみたくなりました。ただ、それだけです」(ふかわさん)
「日常に潜む『当たり前』を、ふかわさんの目線で見つめ直すエッセイを書いていただきたいと思い依頼し、ご相談を進める中で、ふかわさんからご提案していただいたのが、『スマホを置いて出かける』というテーマでした。
日ごろから私たちはスマホにとても助けられている反面、縛られている気もします。そこに共感してくださる読者の方は多いのでは? と感じ刊行することにしました。
『スマホを完全に手放そう!!』という極端なメッセージを伝える本ではありません。ふかわさんが数日間でもスマホを置いて行ったからこそ見えた景色や、出会った人たちの姿がとても瑞々しく、読み終えた後には、日常の見え方がちょっと変わる一冊になりました」(担当編集者)
「スマホを持たずに旅をする」というのは確かに勇気がいるものだ。しかし、本書を読み進めれば、「スマホを持たない旅」の面白さを存分に感じられるはずだろう。「自分自身を充電する」「アップデートする」意味でも、本書をお手本に「スマホなし旅」を実践してみると、これまで違った景色と、自分自身に出会えるかもしれない。
<TEXT/松田義人>
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