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累計90億本売れた森永乳業「マウントレーニア」、製造が追いつかないほど売れたフレーバーは?

ビジネス

コーヒーカルチャーの歩みと共にブランドも定着

そして、日本にもカフェラテやカプチーノ、カフェモカといった、エスプレッソをベースにスチームドミルクを混ぜたドリンクを提供するセカンドウェーブのカフェができ始め、コーヒーカルチャーが花開くと、マウントレーニアのブランドも徐々に定着していく。

さらに、ブルーボトルコーヒーに代表されるサードウェーブコーヒーが登場したことで、カフェ文化がより多様化し、“マルチミックスコーヒーカルチャー”が形成される。

こうした新しい潮流が、さまざまなコーヒーの飲用シーンを生み出し、日常のライフスタイルの中で、マウントレーニアが飲まれるようになった。

今年で発売30周年を迎えるマウントレーニアだが、コンビニに数多あるチルドカップ飲料の中で、なぜ不動の地位を築くことができたのか。

佐熊氏は「素材や味の設計にこだわり、乳業メーカーならではの本格的なカフェラテの味を提供できているのが大きい」と話す。

「美味しいコーヒーづくりを目指すために、商品や原料の開発研究を行う『コーヒー鑑定士』が、時代のニーズに合わせ、一貫して挽き立て・淹れ立てのような味わいを追求してきました。例えば、コーヒー豆を選定する際も産地や品種などさまざまな種類があるなかで、今までマウントレーニアで使用したコーヒー豆ブレンドは50種類以上に上ります。

加えて、美味しさを引き立てるようなエスプレッソとミルクの最適な配合を考え、独自のアフターブレンド製法(エスプレッソとミルクを別々に殺菌し、タンクで混ぜる製法)によって、雑味がなく手淹れのコーヒーに近い味わいを実現しました」

また、プラントベース(植物由来)の流行時には「ソイラテ」、ヘルシー志向の高まりに合わせて砂糖不使用やカロリー30%オフの商品の展開、カフェインレスがトレンドになったときには「デカフェ(現在の商品名は「カフェインレス」)」を発売するなど、世の中の動向を捉えた商品化を心がけてきたのも、マウントレーニアが支持される要因といえよう。

直近10年間で最も売れた「クッキー&クリーム」のフレーバー

歴代のマウントレーニアの商品一覧(一部)

歴代のマウントレーニアの商品一覧(一部)

ちなみに、これまで販売してきたマウントレーニアの商品はリニューアルを含めると約250品になるという。

2021年11月に発売した「マウントレーニア カフェラッテ スノーファンタジア ~クッキー&クリーム風味~」

2021年11月に発売した「マウントレーニア カフェラッテ スノーファンタジア ~クッキー&クリーム風味~」

 なかでも、人気の高かった商品が2021年11月に発売した「マウントレーニア カフェラッテ スノーファンタジア ~クッキー&クリーム風味~」だ。

「直近10年間におけるフレーバー商品の中では一番売れた」とマーケティングを担当した佐熊氏は振り返る。

「お菓子やアイスのカテゴリーでは、人気フレーバーの上位に入る『クッキー&クリーム』でしたが、チルドカップ飲料の商品としてはあまり世に出てなかったんです。そこに着目し、冬の季節限定で発売したのが、『スノーファンタジア ~クッキー&クリーム風味~』でした。季節柄、濃厚でクリーミーな味が求められることもあり、売れ行きが非常に良く、数週間で在庫が品薄になって、製造が追いつかないほどでしたね」

贅沢な味わいにこだわりすぎて日の目を見なかった商品も

 そんな人気商品の裏では、日の目を見なかったものも。

2016年に発売したマウントレーニア「Rich」シリーズ

2016年に発売したマウントレーニア「Rich」シリーズ

2016年に発売した、マウントレーニア史上もっとも贅沢な味わいを目指した「Rich」シリーズである。

 「『飲みきりサイズの商品が欲しい』というお客様の声に応えようと、通常サイズの240mlではなく、180mlの小容量タイプで販売し、さらにはコーヒーとミルクの質や量、製法すべてにこだわり抜いた本格志向の商品として出したのが『Rich』シリーズだったんです。従来の緑から金色のロゴに変えるなど、プレミアム感も訴求しました。最終的には支持されずに終売しましたが、濃厚かつ上質な味を追求した商品として「ディープエスプレッソ」が今もラインアップされています」

“チョコミン党”が支えた復刻フレーバー総選挙

「マウントレーニア カフェラッテ カカオミント」

2018年に発売した「マウントレーニア カフェラッテ カカオミント」。熱狂的なチョコミン党の後押しによって、復刻フレーバー総選挙では1位に輝く

 今年1月には、マウントレーニア発売30周年を記念した「復刻フレーバー総選挙」を開催。過去に話題となった8商品がノミネートされ、栄えある1位に輝いたのは「カカオミント」だった。

 佐熊氏は「最終的には『カカオミント』がダントツ1位だったが、中間結果では宇治抹茶の『ほな、抹茶』が1位で拮抗していた」と選挙の裏側を吐露する。

 「チョコミントか、抹茶か。どちらのフレーバーに決まるか、中間集計の時点では僅差の状態でしたが、そこから『カカオミント』が急激な追い上げを見せたんです。その原動力になったのが、“チョコミン党”の方たちでした。TwitterやInstagramといったSNS上で、チョコミントのスイーツを愛してやまない熱狂的なファンが『抹茶には負けたくない』と結束し、『カカオミント』の良さを積極的に拡散するようなムーブメントが生まれました。これが一気に『カカオミント』の票を集めることにつながり、見事1位を獲得したわけです」

復刻フレーバー総選挙の2位以下の商品一覧

復刻フレーバー総選挙の2位以下の商品一覧

 今回の復刻選挙では、当初2万票くらいの応募を見込んでいたそうだが、蓋を開けてみれば約7万票の応募が集まったという。

 「キャンペーンをやって感じたのは『お客様ごとに、心に残っているフレーバーがある』ということでした。ノミネートされた8品以外にも、好きなフレーバーを思い出してSNSにコメントを書いてくれたりと、マウントレーニアを販売する身としては、メーカー冥利に尽きると感じましたね」

左がマウントレーニアの旧ロゴで右が新ロゴ

左がマウントレーニアの旧ロゴで右が新ロゴ

 今後は「現状維持ではなく、世の中のニーズに合わせた商品開発を続けていきたい」と佐熊氏は抱負を述べる。

 2023年2月にロゴを変更し、キーメッセージには「今日がやさしくなっていく。」を掲げるマウントレーニアは、これからも安らぎや癒しを提供するブランドとして成長させていくという。

 6月に復刻するカカオミントに加え、どんな新商品が登場するかも含め、動向を追っていきたい。

<取材・文・撮影/古田島大介>

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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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