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「この娘達を全部売る!」アラフィフ漫画家が目撃した、蒸発した父の背中<漫画>

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フィリピンパブ通いについて描きたい

──本作は、“90%実話”と紹介されていますが、どういった部分は脚色がされているのですか?

近藤:実を言うと、ほとんど実際にあった出来事なんですよ(笑)。細かい出会った場所などは内容に応じて変えた部分もあります。あと、主人公である自分自身もこんなに良いヤツなのかなって。もっと嫌らしくて、女性ばっかり追っかけてたようにも思いますし。ただ、エピソードとしては全部、事実ですよ。

──本作としては2巻目で完結されて?

近藤:最後に色々と詰め込んだのですが、まだまだ描き足らないこともあります。例えば、日本でのフィリピンパブ通いについても描きたいですしね(笑)。チャンスさえあれば、いつでも描きたい気持ちでいます。

50歳を目前にやりたいことが明確に

ココ・ロングバケーション

当時の日本には夢があった ©近藤令/講談社

──これまでのお話を振り返ると、何度か挫折のような経験をされながらも、50歳を目前に再び作品発表の機会に恵まれました。ご自身としては、なにが理由だと思われますか?

近藤:なんだろう……。50歳近くになると、先の人生を意識するようになるので、やりたいことが明確に見えるようになってきたんです。今さら好きでもない仕事に就こうっていう気持ちにもならない。今できる好きなことを精一杯やろうって。

 だから、気分的にも楽になって、これまで触ったこともなかったタブレットで漫画を描くことや、年齢の離れた編集の方との創作にも楽しく取り組めました。なので、初めて接することを面白がろうという気持ちでいると、いつか思いをかなえられるような気がしますね。

──何歳からでもチャレンジができるんですね。

近藤:そう思います。自分で勝手にできないと決めつけない。思えば、うちの親父もね、フィリピンパブに女性を送り出す仕事がダメになってからも、現地で日本料理屋をやったり、コンドミニアムの経営をやろうとしてました。なかなか、手本にするのは難しいのですが、そういうなんでもやってみる生き方が案外、大切なのかもしれませんね。

<取材・文/橋本未来>

【近藤令】
1993年、青年漫画の登竜門として知られる、ちばてつや賞ヤング部門にて優秀新人賞を受賞。その後、空前のパチンコブームの波に乗り、次々と創刊されたパチコン雑誌にて実録漫画の連載を4~5本掛け持ちするほどの売れっ子漫画家に。50歳を目前に、自身の父親やフィリピンでの出来事を描いた『ユウは何を見たか』でモーニング・ショート漫画大賞で矢部太郎賞を受賞し、『ココ・ロングバケーション』を発表。
Twitter:@kondourey

ココ・ロングバケーション(1)

ココ・ロングバケーション(1)

時はバブル全盛期。主人公のユウは、10年前に家出した父と会うことを決意する。指定された場所はフィリピン!? 90%実話な、ディープすぎるフィリピン紀行が開幕──

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