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住む場所や生活保護を諦める人も…“貧困問題に取り組む”上智大生らが見たリアル

ビジネス

「福祉行政に頼るのは死んでから」

家あってあたりまえでしょプロジェクト

 行政の問題点はまだまだある。

「住居のない人が生活保護を受ける際、法的根拠のない書類の記入を求めていたことも発覚しました。その書類には『何を食べたか』『どれだけお金を使ったか』など、細かな行動履歴を書き込まなければならず、行政からのこのような要求に精神的苦痛を感じ、支援を諦めてしまう人も少なくないです。なかには『福祉行政に頼るのは死ぬ前か死んでからにしたい』『もう2度と無料低額宿泊所には入りたくない』と話す男性もいました」

 福祉行政の不適切な対応が、人々を路上やネットカフェに追いやる主要因になっていることがうかがえる。しかし、なぜここまで行政の対応は冷たいのか。

困窮者に対する配慮や理解が不足

「電話相談を受けていても、『働ける人は生活保護を受けられないと言われた』という相談が毎日のように寄せられます。このような対応が珍しくない背景には、困窮者に対する配慮や理解の不足がうかがえます。そもそも、一時宿泊施設の提供は福祉行政が自主的に始めたものではありません。

 派遣村を発端とした反貧困運動の要求で実現したものです。このような要求やアクションが徐々に下火となり、市民と行政の緊張関係が脆弱化したことが、現在の消極的な対応を招いてしまったのではないでしょうか

 困窮者に対する行政側の理解不足に加えて、私たちの福祉に対する意識の低下が、セーフティーネットを脆弱なものにしていることがわかった。

 今すぐに福祉行政とは無縁の生活を送っていても、いつお世話になるかはかわらない。いつでも安心して利用できるセーフティーネットを整備することは急務であり、そのためには常に私たちが福祉行政の在り方を注視する必要があるのかもしれない。

<取材・文/望月悠木 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
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【家あってあたりまえでしょプロジェクト代表 岩本菜々】
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