菅直人元首相「ヒトラー発言」騒動で思わぬ”余波”。橋下氏と維新の関係はグレーゾーン
スター議員の不在が維新の悩みか
維新で目立つのは吉村洋文知事や松井一郎市長ばかりで、ともに大阪の首長です。国会議員が一堂に介して討論する番組では、以前なら国会議員団代表の片山虎之助議員が出演していました。片山議員が体調を悪化させたため、現在は馬場議員や政調会長の音喜多駿議員が出演しています。
片山議員は自民党議員時代に総務大臣を務めた重鎮です。高齢というハンデはあるものの、それをカバーする経験がありました。一方、馬場・音喜多両議員は片山議員よりも経験が浅く、人気や訴求力は吉村・松井両氏に及びません。
そのため、維新は国政でも同じように発信力・影響力を発揮できる人物を欲し、焦っていると考えられます。しかし、それは維新という政党の権力構造に由来しています。維新は地域政党である大阪維新の会を頂点に全国の支部や国会議員団が連なる組織体です。これが、訴求力のある国会議員が登場しない一因にもなっているのです。
橋下徹再登板論が絶えない理由
全国で通用する国政政党へと脱皮を遂げるには、優秀な国会議員を揃えなければなりません。優秀な国会議員であることとスター性を有する国会議員であることはまったく別次元の話ですが、スター性のある国会議員がいればテレビ・新聞・ネットで注目を集めることができ、維新が取り組んでいる政策を広めることが容易です。そのため、維新はスター性のある国会議員を必要としているのです。
それは、維新が国政政党の旗揚げの準備を進めていた頃からの課題でもありました。国政政党の日本維新の会は2012年に旗揚げされましたが、すぐに故・石原慎太郎議員が代表を務めた太陽の党と合流。その後も、みんなの党から分党した結いの党と合流して、国政での存在感を強めています。
これだけを見れば、維新の歩みは非常に順調といえます。焦る必要はありませんが、地域政党時代から現在に至るまで、維新が生んだ最大のスターが橋下徹さんであることを考えると、できるだけ早くスター性のある国会議員が登場してくれることを望む気持ちは理解できます。そうした背景から、支持者や維新議員の一部から橋下徹再登板論が絶えません。
菅直人議員のヒトラー発言をめぐる立憲と維新のバトルは、先の参院選を見据えた話題づくりのようにも見えますが、この話題が夏まで続くとは考えられません。有権者の多くは、すでに菅ヒトラー発言をめぐる一連の騒動に食傷気味です。
<TEXT・撮影/フリーランスカメラマン 小川裕夫(@ogawahiro)>