衆院選の“真の勝者”は誰か?維新の会躍進だけじゃない、大きな変化も
候補者の一本化は野党のみの話ではない
例えば、東京15区では自民党の現職である今村洋史候補と無所属の柿沢未途候補が立候補しました。東京15区は秋元司議員の地盤でしたが、IR汚職事件で逮捕・起訴されたことから自民党は候補者からはずして、新たな候補者を立てることになったのです。
今村候補は自民党東京都連が公認申請。ところが、選挙直前に自民党への入党を希望していた柿沢候補も東京15区から出馬することになり、自民党は両者を公認候補とせず、推薦という形にしています。
また、静岡5区は長らく民主党政権で環境大臣を務めた細野豪志候補の地盤でしたが、後に細野候補は無所属議員ながらも自民党の会派に入会。そのため、自民党系の議員として目されるようになりました。しかし、自民党は静岡5区に公認候補を擁立。立憲民主党も公認候補を立てる乱戦になりました。こうした争いはありましたが、今回はおおむね与野党が対決する構図となり、政権交代が注目されたのです。
これらの選挙区の結果を見ると、東京8区は立憲民主党の吉田候補が勝ちました。東京15区は無所属の柿沢候補が勝ち、自民党から追加公認を受けることになりました。静岡5区の細野候補も無所属で勝ち上がっています。
立憲民主党、日本維新の会の動向は
衆院選直前に選出された岸田文雄首相は、就任から日数が浅いために有権者に訴求できる実績がありませんでした。そのため、コロナ対応を徹底することやその後の経済対策などを街頭演説で粘り強く訴えました。自民党は知名度の高い安倍晋三・麻生太郎・菅義偉という3人の元首相を接戦の選挙区に惜しみなく投入。
一方、2017年よりも一本化が進み共闘のイメージを強く打ち出す立憲民主党は、「変えよう。」をキャッチフレーズに選挙戦を展開。立憲民主党にも菅直人・野田佳彦という2名の首相経験者がいますが、こちらは主に自分の地盤に近い選挙区を中心に応援に回りました。立憲民主党は衆院選に不出馬ながらも、2019年の参院選に立候補し、次点で涙を飲んだ市井紗耶香さんが応援弁士として駆け回っています。
自公連立にも野党連合にも与しない日本維新の会は、地盤である大阪で手堅く固めました。その一方、大阪圏外でも勢力を拡大するために吉村洋文大阪府知事が票の掘り起こしのために全国を回っています。
前回の衆院選で自民党は276議席を獲得しましたが、これ以上の上積みは現実的ではありません。そのため、自民党がどれほど議席を減らすのか? といったことが、今回の衆院選のひとつの注目ポイントでもありました。しかし、岸田総裁は議席を大幅に減らすことなく、衆院選を乗り切りました。