メルカリが上場以来初の黒字に。追い風になった「アメリカ攻略」とは
海外展開はアジアからが定石だが…
メルカリが最も力を入れているのがアメリカ事業です。2014年3月にベンチャーキャピタルなどから14.5億円を調達し、米国進出をすると発表しました。上場するはるか前からアメリカ進出を決めていたのです。新興企業でいきなりアメリカ進出をするのは極めて稀です。
楽天のフリマアプリ「ラクマ」は2016年3月に台湾でサービスを開始したように、海外展開する際はアジアからというのが定石です。けれども、メルカリはアメリカの中古市場の大きさを理由に果敢に攻め込みました。
アメリカでのメルカリの流通総額は同じく2021年6月期において1238億円で、日本の4分の1ほど。しかし、この金額は大きな意味を持っています。月間1億ドル(110億円)を損益分岐点の目安としており、長らく目標としていたからです。今期ついに達成することができました。
アメリカで吹いたコロナの追い風
なぜ、広告費を削減したメルカリが早くも目標を達成することができたのでしょうか。これには新型コロナ感染拡大の影響が深く関わっています。ファッションの中古品をオンライン上で売買するTHREDUPのレポートによると、2020年のオンラインの中古市場は前年比25%増加しました。その反面、中古ショップなどの市場は25%減少しています。
アメリカの新型コロナウイルス感染拡大ペースは速く、厳しい外出制限措置がとられたことで、オンライン上の取引が活発化したのです。この流れにのったのが、オンライン中古市場で圧倒的なシェアを握るeBayです。長らく流通総額800億ドル(8兆8000億円)を超えることができませんでしたが、2020年に1000億ドル(11兆円)まで跳ね上がりました。これだけの認知度があるeBayでさえ17%も流通総額を増やすことができたのです。
メルカリもこの大波に乗りました。2020年6月期第4四半期(2020年4-6月)から数字が跳ね上がっているのが分かります。コロナ前の流通総額の増加ペースは20%前後でしたが、コロナで70%も増加しました。これは市況の変化であり、プロモーションの効果ではありません。販管費が抑えられたのは、市況の変化で流通総額が押し上げられたためです。