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業界の常識を作った「くら寿司」取締役が語る“最大のライバル”との闘い

ビジネス

コロナ前から安心・安全にこだわりが

 他方、現在の回転寿司業界は群雄割拠。“御三家”と呼ばれるくら寿司やスシロー、かっぱ寿司はもとより、近年、魚べいやはま寿司などの新興勢力が激しい競争を繰り広げている。そんな状況下、くら寿司は競合他社とどのような差別化を図っているのか。

「差別化というよりも、むしろ“こだわり”の部分で話しますと、『美味しい』や『安い』に加えて『安心』を届けることは創業以来大切にしていることです。合成着色料や人工保存料などの四大添加物を使わないのは『自分の家族に出したくないものは、お客様に出さない』という考えがあるから。一例として回転寿司の出すウニに、添加物のミョウバンが使われていることがいっとき不安視されることがありましたが、くら寿司ではミョウバンを使用せずにウニを提供しています

 こうした想いは、コロナ禍になる前から自社開発していた防菌寿司カバー「鮮度くん」からもうかがい知れる。

「今の社会情勢は抗菌や抗ウイルスが叫ばれていますが、くら寿司としてはすでに2011年から『鮮度くん』を通して、空気中のほこりや人の飛沫から寿司を守る取り組みをしています。店舗でのコロナ対策に追われることなく、むしろ従前の取り組みをお客様により認知いただくため『スマートくら寿司』を掲げ、いち早くコンタクトレスやタッチレスといった非接触文脈の訴求を行ってきました」

テイクアウト需要がコロナ禍で2倍に

くら寿司

2011年から空気中の汚れやウイルスの付着を防ぐ「鮮度くん」を導入

 コロナ禍で苦境に立たされる飲食店も多いなか、くら寿司もロックダウンで休業に追いやられた米国事業の業績不振が尾を引き、連結決算で見れば2001年の上場以来、初の赤字へと転落した

 しかし一方、国内事業だけで見ると2020年度は過去最高売上を上げている。厳しい状況の中でも屈せずに持ちこたえたのは「安心安全へのこだわりの他に、テイクアウト需要が根付いていたのが大きかった」と岡本氏は振り返る。

「『混んでいるときは寿司を持ち帰って食べる』という食文化があったので、コロナ禍では全体の20%くらいをテイクアウトの売上で占めるようになったんです。また、自炊派が増えている一方、いざ外食する際は『自宅で作れないものを外に食べに行く』機運が高まったため、たまの外食には寿司や焼き肉を想起するお客様が比較的多かった」

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