「高卒元プロ野球選手」の公認会計士が語る、折れかけた心を支えた“選手2人の存在”
企業側は営業&ガテン系の求人しか出さない
現在は公認会計士として税理士法人・株式会社オフィス921に勤務。日本プロ野球OBクラブ(全国野球振興会)と日本障がい者サッカー連盟の監事を務めるほか、2017年にアスリートのキャリア形成に取り組む「一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構」を立ち上げて代表理事に就任。
2019年には自身が代表取締役社長を務める株式会社スポカチを創業し、アスリートの就職紹介やスポーツ団体のコンサルティングにも乗り出した。二足どころか複数の草鞋(わらじ)を履くのは、スポーツの発展に貢献したい、かつての自分と同じようにセカンドキャリアに悩むアスリートを支援したいという思いからだ。
奥村さんは、元プロ野球選手をはじめとするアスリートのセカンドキャリアがうまくいかないケースが多いのは、2つの大きな問題があると考えている。1つは「求人とのミスマッチ」だ。
「ビジネスの世界においては、元アスリートは体力と根性がある、礼儀がしっかりしているなどの点が評価され、営業や肉体労働系の求人が多くあります。その分野で結果を出している人もいますが、だからと言って全員が向いているわけではない。
人と話すのが苦手なシャイな人だっていますし、データ分析が好きな人、実は芸術系の才能がある人だっています。就職紹介をするキャリア支援会社は増えましたが、紹介する側も、求人を出す企業側も営業系、体力系の能力しか評価していないのが一番の問題だと思います」
チャレンジすれば道は開ける
そして、アスリート側にも大きな原因があると指摘する。それは「自ら可能性を閉ざしている」ことだ。
「アスリートの本当の価値は、スポーツで培ってきた成長プロセスが身に染みついていることです。仕事の専門的な知識やPCスキルなどは後から身につける必要はありますが、ビジネスにおける基礎力は一般の人よりも高いはず。
これにアスリート自身が気づかず、『自分はスポーツ以外できない』と言い訳し、自ら可能性を閉ざしているんです。人生で越えられない壁はただひとつ。自分で作った壁だけなんですよ。チャレンジすれば、いろんな道が開けることを知ってもらいたい」