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29歳・元看護師が被災地で「ゲストハウス経営」を始めた理由

ビジネス

新しいコミュニケーションのある場づくり

気仙沼

2020年2月に託児所をオープン

 コミュニケーションのある場づくり、彼女はその見つけた介在価値をさらに多方面に広げていく。

「ゲストハウスでは昼間にママ向けの絵本カフェを行っています。その時に、ママたちが『1日中ほとんど子供と離れられない』という悩みを持っていることに気づいたんです。親が子供から離れて自分の時間を持つなんて非常識、仕事以外で子供を預けるという概念もない、ということに気づきました」

 そこで彼女はゲストハウスとは別に、2020年2月にもうひとつ、別の物件を借りて託児所をオープンさせた。ここで実現したいのは、困っているママの環境を変えるためだ。

「ママの環境を変えるには、彼女たちではなく、そのほかの人たちにアプローチしていくことが重要です。例えば子育て世代以外を巻き込んで、ママたちの環境を変えるよう行政に働きかけています。あるいは独身の男女が、子供と一緒にママにご飯をつくるというイベントもやっています。そうしてママの気持ちがいろんな人にわかってもらえれば、ママはもちろん、旦那さんもハッピーなはずです」

 彼女は気仙沼という地で自分の介在価値を活かしてローカルに流れる概念を変えるチャレンジをしている

ローカルで生活することのお金事情

気仙沼

 そんな彼女に都会とローカルでのお金事情の差について聞いてみた。

「正直、神奈川にいたときに自分の給料をよく知らなかった(笑)。ただ、その頃の年収が今よりは150万~200万円ほど高かった。でも今、やりたいことはすべてできているので特に何も不自由していません」

 お金も大事だが、自分がやりたいことに時間を使って、夢中になれているかということがもっと大事なのでは? そんなふうに問われているようで少しドキッとした。

「都会での仕事をやめるとキャリアがなくなるという人も多いかもしれないけど、正直なんとでもなると思っています。ローカルはチャレンジもしやすいし、仕事でも都会は自分の役割を担っている人に代わりはたくさんいますが、こちらだと個人として価値を認めてもらえる機会が多い。むしろ今、いろんな環境に直面して、できることがどんどん増えている。仕事がなくなっても、“何屋さん”になって生きていける気がしています(笑)」

 サラリーも大事だが、自分自身がお金を生み出せる価値をどうつけるか。そして何よりそれを自分の介在価値を見つけて磨いていく。今回、お金以上に大事なことを彼女に教わった気がする。人生に悩む若い方は一度、ゲストハウス架け橋を訪れてみてほしい。

<TEXT/森成人>

関西大学卒業後、1999年リクルートに入社。新規事業開発の仕事を経て、2013年4月より被災地気仙沼市へ出向。仮設住宅暮らしをつづったブログ「気仙沼出向生活」が話題。現在はじゃらんリサーチセンターに所属しながら気仙沼市復興アドバイザー、さらに観光庁登録の専門家として地域活性の仕事に従事

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