黄金世代のドラフト1位。元ヤクルト投手が語る「プロで活躍できる、できない選手の差」
強者を倒す野球がしたかった
教え育てる醍醐味を知った増渕さんには「いつか高校野球の指導者になりたい」という新たな目標もある。
「僕が高校に進学する時は強者を倒す野球がしたくて、全国から優秀な選手をかき集めた私立の強豪校ではなく、公立に行くと決めていました。鷲宮高校を選んだのは(当時の)高野和樹監督が野球だけでなく、人間性までしっかり指導してくれる方だったからです。チームもみんなが同じ方向を向けていた。恩師と同じように、自分自身の手でもそんなチームを作りたいんです」
増渕さんがプロのスカウトに注目されるきっかけのひとつが、高校3年生の春の関東大会で私立の強豪校・東海大相模に勝利したことだった。
「相手ピッチャーは巨人の菅野智之、野手には広島の田中広輔もいました。彼ら目当てのスカウトが集まる中で勝利して、注目されたんですよね。逆境になればなるほど、僕の中でスイッチが入るんです。プロでも負け越している時にリリーフ登板すると燃えましたからね」
88年世代の活躍を励みにしたい
指導者としてもジャイアントキリングを成し遂げたい。しかし、現状では公立校を率いるためには壁もある。
「教員免許を持っていないので、今のところは公立を率いることはできないんです。あれだけ敵意をむき出しにしていた私立しか選択肢がないんです(笑)。そこはブレてしまうのですが、私立だとしても高校生を指導してみたい」
増渕さんにプロ野球選手としての未練はないが、高校時代に対戦した1学年下の菅野選手も田中選手もまだ現役。特に切磋琢磨してきた同学年の活躍はいつも気にかけているという。
「32歳になる年です。選手として脂も乗っているし、チームを引っ張っていく立場でもある。実はマー君がメジャーに行く前までは88年会という集まりがあって、みんな仲がいいんですよ。勇人は巨人の主将を張っているし、ソフトバンクのギータ(柳田)も打ちまくっている。マエケンやマー君もメジャーで奮闘している。同期にはもっと頑張ってほしいなと応援しています。彼らの活躍を励みに、僕も指導者として成長したいと思っています」
<取材・文・撮影/中野龍>