黄金世代のドラフト1位。元ヤクルト投手が語る「プロで活躍できる、できない選手の差」
実力を出せるかどうかは紙一重
自身にとっての武器は最大153キロを記録した剛速球だった。当初はコントロールを気にするあまり思うような球が投げられないこともあったが、試行錯誤していたフォームが定まってから持ち味を発揮した。
「’10年の春キャンプでしたが、フォームを崩して悩んでいた時に一軍投手コーチの伊藤智仁さんに『こうしてみろ』とアドバイスをいただいたんです。それから、球速がガッと上がったんですよね。
このシーズンに20ホールドを挙げました。やはりスピードピッチャーというのが僕の強み。そこを追求すべきだったんです。伊藤さんがいなかったら、もっと早くプロ生活を終えていたと思います」
しかし、野球の英才たちが集うのがプロ。埋もれたまま終わってしまう選手も少なくない。
「9年間のプロ生活の中でいろいろな選手を見てきましたが、本当に紙一重なんです。活躍できる要素を持っているのに実力を出し切れていない選手もいます。逆に言葉は悪いですが、“普通の選手”がスーパープレーヤーになることもあります」
生徒の長所を伸ばす指導を心がける
後者の代表例がヤクルトの後輩・山田哲人選手だ。
「足が速くていい選手でしたが、日本を代表するスラッガーにまで成長するとは思いませんでした。でも、彼の良いところは素直で真面目なところ。当時からコーチの話をしっかり聞いて、地道に練習していました。野球に限ったことではありませんが、才能はもちろん重要です。しかし、より大事なのは山田のような人間性だと思うんです」
増渕さんが上尾ベースボールアカデミーで目指すのは、生徒の長所を伸ばすこと。そして、あいさつや返事がしっかりできる人間性の育成も重視している。
「基礎を身につけた上で、長所をどんどん伸ばしてあげたい。短所は平均くらいまで持っていければいいと思っています。プロだって長所を武器に生きていくわけですから、その方が野球を楽しめるはず。
現在、生徒は約100人いますが、考え方や性格のパターンは100通り。全員違います。こんなにもいろんな子がいるんだと毎日が発見ばかりで、本当に面白い。野球を教えてはいますが、僕の中では全く違う仕事に転職したみたいな感覚です」