「ココイチ」だけがなぜ全国展開できたのか?カレーチェーンでひとり勝ちの理由
コンサルタント的視点で経営の謎を解明
では、なぜココイチだけがカレー業界でこんなにも突出した業績を残しているのだろうか。その謎を、通常のコンサルタント的な視点、続いて経営学者の視点という2段階で解いていくことにする。
はじめは普通のコンサルタントの視点である。通常のコンサルタントであれば、ココイチの成功の秘訣は「普通の味による、自分だけの味」を作り出したからと答えるだろう。実は、ココイチで使われるカレーの原材料は「バーモントカレー」で有名なハウス食品から供給されている。まさに慣れ親しんだ普通の味、家庭の味だと言える。
そこに、辛さの段階と自分だけのトッピングを選べることで、自分だけの味を作ることができる。いわば、オーソドックスさとカスタマイズとの両にらみができるために、多くの人に愛される味になっているというわけである。
もちろん、この説明にも一理ある。しかし、よくよく考えると「それはそうだけど、そんな簡単なこと、どうして真似をする人が出てこなかったの?」という疑問がわいてこないだろうか。こうして次々と疑問を深めていくのが経営学者の視点である。
他社が真似できないココイチの戦略
産業組織論の基本として、独占に近い利益が得られる業態では新規参入が相次ぐことになる。
もちろん、経営戦略論・競争戦略論で著名なマイケル・ポーターが指摘するように、そうした参入や戦略変更には障壁があるとは考えられる。しかし「オーソドックスなルーとバラエティ豊かなトッピングの組み合わせ」という戦略を取るのがそんなに難しいとは思えないだろう。
だから、本当に問われるべきは「一見すると簡単にみえるココイチの戦略に他社が追随できないのはなぜか?」なのである。すでに一部経営学の知見を用いて思考しているが、この先さらに経営学的思考を進めてみよう。
実は、カレー業界においてチェーン展開をおこなうと、一定規模を越したところで「カレー粉の安定供給」ができなくなるという問題がある。