アマゾン、楽天、ヤフー「国内EC市場」に消費税10%が与えた影響とは?
増税で併用ユーザー増加傾向に
増税前の7-9月と増税後10-12月の各3か月で主要ECサイトの併用状況を比較してみると、Amazonは1%、楽天市場は3%、Yahoo!ショッピングは4%といずれもロイヤリティの高い「併用なし」ユーザーが微減。Amazonユーザーの楽天市場併用は74%、楽天市場ユーザーのAmazon併用は64%で変化がないものの、それぞれYahoo!ショッピングの併用が2-3%増えています。全体にわずかながら併用が増えたのは、増税前に比べコスト意識が高まって最もお得なチャネルを模索している傾向かもしれません。
10月オープンしたPayPayモールのユーザーは、83%が楽天市場かYahoo!ショッピングを、72%がAmazonを併用していますが、店舗数が少ない影響でしょうか。Amazonユーザー、楽天ユーザーともPayPayモール併用は22%にとどまるものの、Yahoo!ショッピング併用が増税前より微増しました。
アプリに関してはAmazonが「併用なし」38%のロックオン力を見せつける一方、他3アプリのユーザーはいずれも60-74%がAmazonを併用しています。とはいえ簡単にEC間を遷移できるブラウザと違ってわざわざ起動する手間を惜しまないユーザーなので、新設のPayPayモールユーザーを除くとサイトに比べ競合はゆるやか。増税前後で併用状況の変化もほとんどありませんでした。
まずはアプリを入れてもらえるかどうかは、EC各社にとって勝負の分かれ目といえそうです。
EC経済圏乱立も2次流通市場は囲い込めず
以前の記事「PayPayが独走するスマホ決済。行動ログから未来を予測」でも触れた通り、スマホ決済バトルはほぼ携帯キャリア系のPayPay、楽天ペイ(通信は4月から本格展開)、d払い、au PAYに集約されていくと見るのが妥当でしょう。メルカリのOrigami買収は0円(実際は1株1円で260万円程度との推測)という買収額も手伝い話題にはなりましたが、決済専業スタートアップにとってスマホに毎月払う通信料金の延長線という身近な顧客接点は、どうやら乗り越えがたい参入障壁だったようです。
決済専業と比べECビジネスは、買い物を通じて溜まる嗜好や行動履歴、決済という一連のパーソナルデータを使わせてもらえる(そうでないと個々人に合ったサービスを提供できない)ため、より深い顧客関係をもちやすい強みがあります。とくにYahoo!と楽天が目指すのは、ECのほか通信、コンテンツサービス等のあいだでポイントやサービスが循環する経済圏です。
各社ECユーザーの利用が一般ユーザーに比べて特徴的に多いアプリからは、Amazon上位10アプリのうち3、楽天市場は同7、Yahoo!ショッピング(PayPayモール)は同6アプリが自社ブランドを占め、それぞれの経済圏に囲い込まれるユーザーの姿が浮き彫りになりました。自らスマホ決済に参入しないAmazonは楽天やYahoo!と異なり、プライム・ビデオやMusicといったコンテンツで独自モデルを築いています。
ただしAmazonユーザーは7位楽天市場、楽天市場ユーザーは5位Amazon、Yahoo!ショッピングユーザーは5位楽天市場と9位Amazonショッピングの利用も多いので、コアなECブランドの経済圏に囲い込まれつつも、実際の買い物は複数ECを比較しているのでしょう。
3大ECユーザーとも利用が多いのはメルカリで、買い物の選択肢として中古品を見比べるユーザーもいそうです。メルカリ以外の2次流通ECだと、Yahoo!ショッピングユーザーの7位ヤフオク!だけが上位でした。
フリマの利用状況はというと、つい先日NTTドコモとの業務提携を発表したメルカリが2019年4月にヤフオク!を抜いて以来その差を拡大中。PayPayフリマや楽天グループのラクマは1000万人に届かず、2サービスに水を開けられています。