京阪電鉄、全席指定列車「ライナー」に乗車ルポ。張り詰めた空気が…
ガラガラのまま終点出町柳へ
定刻通り19時28分、枚方市に到着し2分停車。先行列車に接近し過ぎないことや、降りる乗客が降りそこねないよう配慮したのだろう。1号車では、ここで降りる乗客2人が足早に2号車へ向かった。また、ここから1人乗車した。乗客の側としては、1人で2席分を思い通りに使える最高の列車だろうが、運営の側としては採算性が合わない。
樟葉でも2分停車。その後、中書島から停車時間が短くなり、丹波橋で準急出町柳行きに接続。準急の乗客にとっては乗り換えたいところだろうが、先述したとおり、ライナー券は特急及びライナー停車駅の窓口、プレミアムカークラブでしか買えない。
鳥羽街道を通過すると、左へ大きく曲がり、京都タワーのライトアップがきらびやかに輝く。東福寺を通過すると、地下へ入り七条へ。ここからライナー券なしでも乗車できるので、すべての乗降用ドアが開く。
フリー乗降区間でも乗車率は上がらず、三条で準急出町柳行きに接続。ここから鴨東線に入り、20時07分、終点出町柳2番線に到着した。向かいの1番線は待ちわびていたかの如く、各駅停車中之島行きが発車。ほどなく淀屋橋19時11分発の特急が1番線に滑り込み、8000系エレガント・サルーンが並んだ。
ライナーの課題
ライナーは2017年8月20日(日)のダイヤ改正で登場。平日のみ運転で、当初は下り樟葉・枚方市―淀屋橋間に2本設定され、樟葉始発の列車は枚方市を通過していた。
2018年9月15日(土)のダイヤ改正で、下り1本を出町柳始発の列車として増発。併せて樟葉始発列車を枚方市に停車した。また、上りも淀屋橋―出町柳間2本を新設した。
プレスリリースを見る限り、私は「好評」と受け取っていたが、今回乗った上りライナー1930号出町柳行きはまさかのガラガラ。淀屋橋21時50分発のライナー2130号出町柳行きの乗車率も気になるところだ。
課題をあげてみよう。
① 所要時間が特急より長い
淀屋橋―出町柳間の所要時間を調べてみると、淀屋橋19時00分発の特急出町柳行きは57分、19時11分発の特急出町柳行きは58分に対し、ライナー1930号出町柳行きは64分である。このため、出町柳到着は19時00分発の特急出町柳行きとは10分の差をつけられ、19時11分発の特急出町柳行きとは2分差に迫られている。
これではライナー1930号出町柳行きに乗るメリットが少なく、後続の特急出町柳行きまで待つ乗客が多いと考えられる。
② ライナー券が買いやすい環境を整える
ライナー券の購入方法は先述した通り。京津線、石山坂本線を除く全駅でライナー券やプレミアムカー券も買える券売機の導入が求められる。
③ 乗客は転換クロスシート、ロングシートの有料に納得できない?
特急や土休の快速特急〈洛々〉は、プレミアムカーを除き乗車券のみで乗車できることから、転換クロスシート、ロングシートの有料乗車に難色を示す人がそれなりにいることが考えられる。プレミアムカーとの差額が100円もしくは120円だと、躊躇する人も多いのでは。
転換クロスシート、ロングシートを100円、もしくは200円均一に値下げすれば、妥協する人も増えると思う。
また、快速特急〈洛々〉とライナー用として、全車プレミアムカーの新型車両導入という手もある。これなら納得してライナーを選択する人も増えるだろう。
なお、2020年度には、2代目3000系コンフォート・サルーンにもプレミアムカーが連結される予定だ。特急の大半がプレミアムカーつきになるので、次期ダイヤ改正でライナーの見直しなどが考えられよう。
<取材・文・撮影/岸田法眼>