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年収1000万の33歳が「1000円ヘアカット」を愛用するワケ。早期退職を目指す若者たち

コラム

2000年以降に米国で拡大した運動

 先ほども説明したとおりFIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、FIREとは、「Financial Independence, Retire Early」の略で、直訳すると「経済的独立と早期退職」を意味します。収入増と支出減を徹底し、貯蓄率を最大化することで、標準的な退職年次(日本であれば65歳)から数十年はやく退職できます。

 2000年以降に米国で広がったこの運動はミレニアル世代に支持を受け、ネットのコミュニティで各々のモチベーションや情報共有のために節約、投資、資産残高の記録の公開などが行われています。

 有名な例で、ニューヨーク州で企業向けの弁護士として高給を稼ぐダニエル氏という人がいます。年収は$270,000(約3000万円)にもかかわらず毎日同じスーツを着る、冬でも暖房はいれずに重ね着してしのぐ、食事は安価なコメと豆が中心などの節約を行いながら、月収入の7割以上を貯蓄と投資にまわしています(参照:NEY YORK POST「Inside the strange, secretive lives of rich millennial cheapskates」)。

 彼らに共通するのは「贅沢よりも時間的自由」を大事にしたいという考えです。この考えが背景にあるため高級品などを買うのではなく、将来の時間的自由のために貯蓄・投資を重視します。

FIREから学ぶ資産形成

お金

 年金問題や投資意識の高まりを背景に、日本でも一部のTwitter、ブロガー、YouTuberなどの間で広がりを見せています。SNSでは、彼らの具体的な節約方法や行動様式や投資活動などを垣間見ることができます。伊藤さんもFIREを行う他の人のブログを読んで参考にしているとのことです。

 FIREの根幹にある方程式は非常に単純なものです。収入を最大化し、支出を可能な限り削減。捻出したお金はすべてインデックス投資などに回して資産形成を行います。投資から得られるリターンは、リタイア後は生活費に充てられます。例えば1億円の資産を持ち、税引き後リターン3%であれば年間300万円が収入となり、生活費に充てられることになります。

 これだけ聞くと、通常のフィナンシャル・プランとあまり遜色ないように聞こえますが、FIREが特徴的なのは、主要先進国の貯蓄率が10%程度であるのに対して、FIREの貯蓄率は70~80%と圧倒的に高いことです(参照:OECD Economic Outlook, November 2019)。

 またFIREを行う人に共通するのは、明確な目的意識があり具体的な行動に落とし込んでいることです。伊藤さんの場合も早期リタイアするという強い目標意識を持ち、あらゆる支出を見直し投資にまわしています。初めて知る人からすると極端なものに映るかもしれません。しかし、彼らが行う具体的な節約方法、お金の管理方法、人生や投資の捉え方などは、多くの人の参考になるものでしょう。

<TEXT/飯田隆太 協力/堤國之助@FIRE(@kuninosuke1)>

米国銘柄中心投資家 。米国系 外資企業の財務部に勤務し、2週間に1度しか出社しない「コスパの良い働き方」をしながら、捻出した時間を副業と投資に向けることで、アーリーリタイアを目指している。自身の経験を基にしたキャリア戦略、副業、投資情報を運営サイト「ビズトレ!」で公開中

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