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京急脱線事故から1か月。踏切事故を防ぐには…私鉄各社に聞いた

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車両の大破と横転を免れたのが不幸中の幸い

京浜急行電鉄

JR東日本は踏切事故対策の一環として、クラッシャブルゾーン(衝撃吸収構造)を採り入れた車両が導入されている

 これだけの大きな事故でありながら、快特三崎口行きの先頭車は約45度傾くも横転は免れた。先頭車の前面に損傷はあったものの、大破していない。京急によると、クラッシャブルゾーン(衝撃吸収構造)を採り入れた車両はないという。おそらく、前面の強化、もしくは車体の構造や素材で衝撃を吸収する構造なのだろう。

 京急は長年にわたり、先頭車はモーターを積んだ制御電動車を基本にし、重くしている。念のため京急に確認したところ、「脱線事故が発生した際、車両の転覆と被害を拡大させないこと。先頭電動車の先頭車軸により、確実な軌道回路の短絡を実現するため」だという。

京浜急行電鉄

2代目1000形の初期車はアルミ車体で、先頭車の自重は33.0トン

京浜急行電鉄

2代目1000形は、6次車からステンレス車体に変更された

 事故に遭った2代目1000形ステンレス車の先頭車は、自重33.5トン(ステンレス車によって、34.5トン、35.0トンもあり)。参考までに、アルミやステンレスより重い鋼製車体の初代1000形は自重35.0トンで、思ったほど大差がないことも幸いしたように思う。

京浜急行電鉄

誤輪軌条は、レールの内側に敷設された別のレールをさす

 また、多くの踏切付近に誤輪軌条(脱線防止ガード)が敷設されたことも、被害の拡大を防いだ可能性はある。これはカーブでの脱線事故を防止するために敷設するもの。近年は脱線防止対策の一環として、JR東海の東海道新幹線では、直線、カーブに関係なく敷設が進んでいる。

 在来線でも保守などの手間がかかることを承知のうえで、全線にわたり誤輪軌条の敷設を進め、脱線事故の予防を図ることも検討してほしい。

関東の大手私鉄6事業者の安全施策・対策

 念のため、関東の大手私鉄6事業者(東武鉄道、西武鉄道、京王電鉄、小田急電鉄、東急電鉄、相模鉄道)に、安全施策・対策に関わる以下3つの質問をした。

① 3D式障害物検知装置は設置されているか?

② 踏切で自動車などの障害物を検知した場合、ATS(Automatic Train Stop device:自動列車停止装置)、ATCに関係なく、列車が自動で非常ブレーキがかかるのか、

③ クラッシャブルゾーンを導入した車両はあるか

 以下はそれぞれの質問に対する各社の回答である。

東武鉄道

① 自動式踏切支障報知装置を設置している踏切では、より検知範囲の広いレーダー式踏切支障報知装置への更新を進めており、50か所に設置している。

② 踏切支障報知装置が動作した際は、基本的には発光信号という異常を知らせる信号が表示され、それを確認した運転士が非常ブレーキを掛けて列車を停止させる仕組みとなっている。現在、列車頻度の高い路線には、踏切支障報知装置と連動して自動的に列車を止める仕組みが導入されている。なお、列車頻度の少ない一部の踏切では、まだ導入されていないところもあるが、連動化を進めている。

③ なし。

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