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ヤフーが名称変更。グループ再編のとき経営陣はどんな議論をしているか?

ビジネス

知的財産権などをグループで管理しやすくなる

 メリットはもうひとつある。ヤフーグループの立場から見てみよう。今回のスキームは権利・義務・資産の引き渡し範囲をコントロールしやすいという点である。Yahoo! Japanの事業は新ヤフーに引き渡され、これにともないYahoo! Japanの事業に必要な権利・義務・資産も、Zホールディングスから新ヤフーへ引き渡される。

 しかし、そのとき、引き渡し対象としてリストアップされなかった細かな資産・知的財産権や他社との契約については引き続きすべてZホールディングスが所有できるのである。つまり、新ヤフーには最低限必要な権利・義務・資産を引き渡すが、その他の権利・義務・資産は複雑な手続きを行わずにそのまま持ち株会社であるZホールディングスが持ち続けることが可能なのである。

 すると、グループ全体として活用すべきな知的財産権(商標等)などを、グループ傘下の各子会社に対して、容易に利用させることができるようになるのだ。

ヤフー

図版は筆者作成

会社分割時、上層部がどんな議論を行うのか

 今回のヤフーグループが実施したように、これまで1つだった会社を複数の会社に分ける際には一般的にどのようなことが経営上層部で議論されているのか。

 一般的に「事業」「経理財務」「法務」「知的財産権」「人事」「IT」について、新会社・旧会社のどちらが所有するのか、どのように取り扱うのか議論を行う。

 なお、この議論をせずに会社の分割を行っても、事業が停止するリスクが高まるため、経営上層部を含めて徹底的に議論や確認を行うのが通常である。以下、Zホールディングスを例に、ひとつずつ詳しく見ていこう。

事業・経理財務面でこんなことを考える

・事業面
 経営上層部では、トラブルなく事業継続が可能なのかを全方位的に議論する。切り離された事業が10月1日以降も問題なく運営できるのか、実際に事業を運営するという観点から検討する。

 顧客を確保し、サービス提供し、収益を得るという基本的な事業の流れを想定し、グループ再編以降も滞るポイントがないかを広く確認する。また、新会社としての収益性を再検証し、経営計画を作成する。

・経理財務面
 経営上層部では、経理報告がスムーズにできるか、どの資産を新会社に引き渡すのかを議論する。これまでは1社が担っていた経理業務を、今後は分割後の各社が担うこととなる。そのため経理機能が混乱することが想定されるが、1か月ごとに月締めは必ず行わなければならない。

 さらに上場企業であるZホールディングスは株主に対して適時業績を報告する必要がある。そのため、月の締め作業が問題なく実施できるかという観点を持って問題点を洗い出し経理手続きがスムーズにできるように準備を行う。

 また、貸借対照表上に計上されている会社資産のうちどの資産を旧会社に残し、どの資産を新会社に引き渡すのか、他の部門と協力してひとつずつ検討を行う。

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