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26歳、現役舞踊家が語る「なぜ日本舞踊家の減少が止まらないか」

5大流派から独立した祖母に学ぶのを避けた

 しかし、そんなさなか、事件が起こる――。

 日本舞踊は落語など伝統芸能と同じく、師匠と弟子の関係からスタート。踊りや所作を学ぶ見習い期間を経て、師匠から認められれば“名取り”になる。このとき初めて「一門の屋号」と「師匠の名前」を一文字入れた名前を与えられる。つまり、正式な踊り手としての活動を許されるのだ。

 藤森さんの祖母は、5大流派(花柳流・藤間流・若柳流・西川流・坂東流)のひとつから独立し、新しい流派を起ち上げた。にもかかわらず、藤森さんは5大流派のひとつの、ある師匠のもとで修業を積んで名取りに。一体、なぜ?

「祖母が体を悪くしたこともあるんですが、小さな流派の3代目としてコツコツやるより大きな流派できちんとした先生について名前をもらったほうが分かりやすいと思って。フリーとして活動するにも大きな看板があったほうが動きやすい。自分のファンを獲得できたら、家の流派のほうに戻りたいと思ってますけど」

元の流派から名前を消された祖母

藤森

祖母は小さな流派でやりたかっただけなのに

 また、新しい流派を起ち上げた祖母に厳しい境遇が訪れたことも脳裏をよぎった。

「新しい流派を起ち上げた祖母が、元いた大きな流派からの名前を消されたんです。祖母の師匠は快く受け入れてくれたらしいですが、名前を2つ持つのはタブーだと周囲が認めなかった。わたしも最初から反旗を翻すのは怖かった。祖母は小さな流派でも『踊りがやりたい』『踊りが好き』という人に一流の芸を教えてあげようとしただけなのに……」

 藤森さんのように大学卒業後、舞踊家として活動する20代は少ないそうだ。

「就職や結婚のタイミングで辞める人が大半ですね。もちろんなかには大学院に上がって教授を目指す人もいますけど、わたしのように代々の家系に生まれた踊り手はほとんどいない。お金持ちのお嬢さまで、たしなみとしてやる人が多かったです」

踊り手が挑戦できないのは「叩かれるのが恐い」

 ところで、踊り手同士はどんな関係性を持っているのか?

「家元が同じでも組織の位置が違うってことが多いんです。たとえばInstagramで、『わたし、◯◯流ですけどAさんとか知ってますか?』って言ってもぜんぜん分からない(笑)。そんな背景もあって、人によっては師匠から受け継いだ名前にすごくプライドを持っている。同じ流派でも『わたしのほうが家元に近い先生から教わった』みたいな」

 同じ世界に身を投じているからこその“閉塞感”。「それは日本舞踊界全体にも同じことが言える」と藤森さんは語る。

「せっかくいいものがあって努力しているのに、広げるちからが弱いというか。企業でいえば、良い商品を作ったのに広告費を割いていない。だって、普通の人が“日本舞踊”って検索しませんよね? しかも、踊り手個人が口コミもしない。広がりようがないですよ」

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