ミレニアル世代が振り返る2018年。霜降り明星、ローラ発言、アジアの音楽…
2018年は「ルール」が変わった1年
白武:昨年、個人的に刺さったのが、オードリーの若林さんがエッセイで書かれた価値観の変化。若林さんはこれまで「インスタ映え」や「ハロウィン」などSNSの投稿を冷笑、揶揄していたと。ただ、その後、父親を亡くされたり、キューバに旅行されたり、応援してくれるファンのことを考えていくなかで、そういう笑いはそろそろ違うのではないかと書かれていたんです。
それ、ぼくはすごく共感したんです。同世代と話していても、2018年は意識高い系、リア充を笑う、一億総ツッコミ社会の閉塞的な価値観が更新されている感じがします。
もて:TwitterなどSNSの雰囲気も変わりましたよね。
白武:そうですね。昨年末、価値観がわかれたのは、ローラさんの「政治的な発言」を巡る騒動。どうリアクションをとればいいかわからない人も多かったのかなと思います。
もて:ある種の“アレルギー”みたいな反応も多かったのかなと思いました。みんなの価値観という点では、2017年に引き続いて「#MeToo」の動きもかなり大きく影響を及ぼしてますよね。
白武:急に時代が変わった感じがありましたね。ハゲやデブみたいな容姿をいじることもある時からダメになりましたね。こうした更新についていけない人が糾弾されることも多かったのかなと。
もて:白武さんの仕事だと番組のつくり方も変わったりするもんなんでしょうか。
白武:そうですね。急に“ルール”が変わったのでついていけない人もいると思います。昔は「シモネタが話せないなら面白いものなんてつくれないよ」と言われたら女性のスタッフは黙るしかなかったんですけど、最近はそういう流れもおとなしくなっています。
「おじさん」こそが差別されてる?
もて:それ自体はいい流れですよね。
白武:あとはテレビ局も働き方改革がすごく進んで、ADに対する当たりもどんどん優しくなってきていますね。だからいまはADよりディレクターのほうが忙しくなることもあって。
いままでADとして大変な時期を乗り越えてようやくディレクターになったと思ったら、ルールが変わってしまったという人が出てきている。「割を食っている」と思っている人も多いと思います。
もて:ぼくらと同世代から少し上の世代がちょうどそのあたりのゾーンでしょうか。「割を食っている」という感覚はもちろん理解できるんですが、個人的にはそれが増幅していくと怖い気がしています。
NewsPicksの広告に使われた「さよなら、おっさん。」というコピーなど、2018年は「おじさん・おっさん」の話が出てくる機会も多かった印象があります。白武さんが挙げた例のように「おじさん」が槍玉に上げられたりする一方で、「おじさん」こそが差別されてるという議論も出てきたり。
今こそSNSとの適切な距離感を考えたい
白武:もちろんなくなるべきことですが、一部過剰に「セクハラ・パワハラ」をどんどん告発していくと息巻いている人がいることで、コミュニケーションに及び腰になってしまっている上の世代の人びとはテレビ業界でも多く見かけます。
いままで自分が依拠していたコミュニケーションが成立しなくなったらどうすればいいのか。新たなコミュニケーション術を身につけないといけないですね。
もて:もちろんこれまでのコミュニケーションに問題があったという話ではあるんですが、そこで「俺たちも抑圧されてる」と思う人が増えていくのも怖いなと思っていて。
白武さんが話していたような業界の変化はいいことだと思うんですけど、急速に価値観が変わっている部分もあるので歪みが生じている気もします。そういった歪みから生じてくる怒りとTwitterがもつ拡散性は良くも悪くも相性がいいですよね。
歪みが増幅させる“エモ”みたいなものに回収されないよううまくSNSと距離をとっていくこともこれからは大事になっていくのかなと思っています。
【白武ときお】
1990年、京都府生まれ。いて座。放送作家、配信作家。担当番組は「ダウンタウンのガキの使い!!笑ってはいけないトレジャーハンター24時」「Aマッソのゲラニチョビ」「霜降り明星のパパユパユパユ」など
【もてスリム】
1989年、東京都生まれ。おとめ座。編集者/ライター。トーチwebにて「ホームフル・ドリフティング」連載中
<TEXT/もてスリム>