50億円の損失も…「貸会議室の最大手」が下した“損切り”は英断か
1年間で収益性が急悪化…
投資における重要なキーワードに損切りがあります。含み損が発生している状態で、回復が見込めないときに損失を確定するものです。
例えば、1000円の銘柄を100株買い、800円まで下がったとします。この銘柄はいつか1100円まで上がるかもしれませんが、損失が拡大するかもしれません。なにより資金を寝かせていることそのものが無駄になりかねません。
800円で株式を売却すると2万円の損失が出ますが、そこから再スタートしたほうが良いという判断です。有能なトレーダーほど早い段階で損切りを行うと言われています。
ティーケーピーのリージャス売却がまさに損切りに該当します。日本リージャスは430億円で買収し、三菱地所に382億円で売却します。単純計算で50億円の損失です。しかし、日本リージャスは2021年2月期の営業利益が1億6000万円、2022年2月期は12億7600万円の営業損失を出しています。収益性が急悪化しているのです。
損切りの意思決定も早かった
ティーケーピーは2022年8月末の段階でおよそ350億円ののれんを積んでいます。のれんはその資産額の収益性に見合ったものかどうかを定期的に検証しなければなりません。
リージャスを買収したのは、レンタルオフィス需要が旺盛だったころ。今後はリモートワークが主体となった今の収益性に見合ったものに修正しなければならない可能性があります。
もし、のれんの資産額がその収益性に見合っていないのであれば、減価する必要があります。減価した分は損失として計上しなければなりません。のれんの全額を減損損失として計上することがあれば、純資産のほぼすべてが吹き飛ぶ計算です。何としてでもそれは避けたいでしょう。
ティーケーピーは最悪の事態が発生する前に損切りをしました。今後しばらくは需要が回復するのを粘り強く待つ期間となるでしょう。しかし、トレーダー河野氏がそれで終わるとは思えません。将来的にまた何か大きな勝負に出ると予想できます。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>