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“大手製紙メーカー”で大規模リストラ。黒字予想から「純損失300億円」に急転したワケ

ビジネス

人件費の高さが長年の課題に

 ただし、資源高に苦しめられているのは競合も同じ。王子製紙などを傘下に持つ、業界トップの王子ホールディングスも原価率が急上昇しています。上半期の原価率は大王製紙が8.4ポイント、王子ホールディングスが4.5ポイント上がりました。

大王製紙

大王製紙と王子ホールディングスの原価率 ※各社決算短信より筆者作成

 2社の原価率はほぼ同水準になりました。しかし、王子ホールディングスは2023年3月期に1050億円の営業利益、700億円の純利益を予想しています。減益とはなるものの、黒字化は維持する見込みです。大きく異なるのが販管費率。王子ホールディングスが15.1%なのに対し、大王製紙は21.3%と5ポイント以上差がついています。

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大王製紙と王子ホールディングスの販管費率 ※各社決算短信より筆者作成

 販管費の中でも違いが現れているのが人件費。王子ホールディングスは、社員の給与や賞与が販管費に占める割合が23.7%ですが、大王製紙は31.7%もあります。

 業績が急悪化したことによって、大王製紙は希望退職者の募集に踏み切りました。しかも、上限人数を設けないという大胆なもの。このタイミングで、徹底的なコスト削減を行い、長年の課題だったポイントを解消する様子が見て取れます。

役員への賞与も不支給を決定

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大王製紙東京本社が入居する飯田橋グラン・ブルーム ©soraneko

 大王製紙は2022年3月期に役員に対して7100万円の賞与を支払っていますが、2023年3月期は役員への賞与不支給を決定しました。経営陣も痛みを伴う改革を進めています。

 2022年3月末時点で、連結での社員数が1万3000人近い巨大組織。大胆な意思決定には時間がかかりがちですが、迅速にスリム化のプランと立ち上げ、推進しています。判断力、実行力のある会社であることが逆境下で証明されました。

 かつて中国の好景気も資源価格を押し上げましたが、現在はその勢いを失い、現在の資源高はウクライナ危機に端を発するものです。とはいえ、やがて資源価格も落ち着きを取り戻すでしょう。そうなると、組織のスリム化を図った大王製紙にはチャンスが訪れます。利益率を高められる可能性があるからです。ポイントはどこまで売上高を伸ばすことができるかです。

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