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「IT企業はモンスター」と奇異な目で…都市部と地方の“ITスキル格差”はあるのか

ビジネス

 岸田政権は2021年の発足以来、“デジタル田園都市国家構想”を掲げ、デジタル技術によって「地方と都市の活性化」を目指している。

 しかし、その一方で、デジタル分野を担う人材が都市部に集中し、地方の人材不足が課題に挙げられている。そのため、地方自治体では都市部から地方への移動を促すための派遣制度の見直しを検討するなど、地方と都市部のITスキルの格差を埋めることが急務だ

パソコン 仕事

画像はイメージです(以下同じ)

 実際、地方と都市部のITスキルの格差を思わせる投稿はSNSでも頻繁に見られ、「ウェブ会議をしたいけど上司がZoomを立ち上げられない」「部長がパソコンのショートカットキーを使えない」といった地方企業勤務らしき若手社員の嘆きの声は珍しくない。

 スマホの普及やネット環境の整備などITに親しみやすくなった現代社会において、地方と都市部ではITスキルになぜ差が存在するのか。経済地理学・工業地理学が専門の成蹊大学経済学部教授の小田宏信氏に話を聞いた。

FAXは意外と便利だった

 地方と都市ではITスキルに差があるのか。小田氏は以下のように語る。

「IT業界は別として、同じ業種の同じ規模感の企業や団体を、大都市と地方で比較すればITスキルにそんなに差があるように思えません。あえて遅れを感じたエピソードをお話しすると、ある地方都市で貸切バスを手配しようとした時、FAXベースでのやり取りだったということです」

 とはいえ、「これが業界上の慣習なのかも知れませんし、『実は慣れていくうちにFAXのほうが便利ではないか』とさえ感じました」とのこと。意外にもアナログであることの利便性を見落としてはいけないのかもしれない。

地方でテレワークは必要ない?

小田宏信氏

小田宏信氏

 コロナ禍がどれだけIT化を定着させる影響を与えたのかについては、「これも大都市と地方でそんなに差があるわけではないと思います」と話す。

「もともと、コロナ禍以前から、大都市のオフィスで働いている人が地方でテレワークする、ということはある程度見られていました。コロナ禍では東京出張を控える代わりにオンライン会議中心というケースも少なくありません。コロナ禍の影響は多少あるとは思いますが、『地方にITを定着させた』と言い切ることは難しいです

 また、コロナ禍で普及したテレワークですが、満員電車に揺られて遠距離通勤という前提がない地方ではその必要性も低いものと思われます。『地方はテレワークが進んでいないのは、ITスキルが低いからだ!』と決めつけるのも危険です」

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