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安倍氏暗殺、なぜ駅に背を向けて演説したのか?「首相経験者」が過去にも危険な場面に

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警備に正解は存在しないが…

 要人警護はTPOに応じて体制も態勢も変わります。菅元首相のケースも、SPがつかない時もあればつくときもあるでしょう。警備には、これが正解というものがありません。それでも大和西大寺駅における安倍元首相の警護が手薄だった印象は否めません

岸田文雄

2021年10月4日の官邸記者会見より

 街頭演説のような不特定多数と接触する場ではなく、官邸・公邸の警備はどうなっているのでしょうか? 公邸は首相の住まいとして使われますが、官邸は仕事場です。官邸には政治家・官僚のほか、有識者や自治体の首長、陳情に訪れる業界団体の幹部、新聞・テレビ局の記者などが出入りします。テレビで目にする首相の記者会見も官邸で実施されています。

 私は官邸に10年以上にわたって通っていますが、当初から現在に至るまで、入館時のセキュリティチェックに変化はありません。一連の流れを説明すると、通用門で身分証の確認、館内の受付で再び身分証とアポの有無を確認。その後、X線による手荷物検査と金属探知機を使ったボディチェックです

尾身会長ですら身分証の提示は不可避

 ちなみに、官邸の受付で政府の新型インフルエンザ等対策閣僚会議の会長を務めた尾身茂さんと官邸の入り口で鉢合わせになったことがあります。尾身さんも官邸会見で演壇に上り、医師としての立場から記者たちの質問に答えることがありました。

 尾身さんが官邸を訪れたのは記者会見に政府側の有識者として出るためですが、官邸の受付職員は「名前は?」「身分証を出して」と言い、尾身さんも身分証を出していました。そのやりとりを偶然にも傍らで見ることになった筆者は、吹き出しそうになるのを必死に堪えたのを覚えています。セキュリティを考えれば当然ですが、政府側の有識者といえどもノーチェックで官邸に出入りすることはできないのです

 しかし、日本と諸外国を比べると、まだ甘い部分があります。それが、持ち込むカメラの「シャッターチェック」がないことです。シャッターチェックとは、カメラを偽装した銃ではないことを証明するために、係員の前でシャッターを押す確認作業のことです。

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