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雪印は出遅れた?“牛乳離れ”に苦しむ乳業メーカーの生き残り戦略

ビジネス

アジアでは“森永ブランド”を確立

 2022/3期は前年の内食需要の反動でチーズが軟調でしたが、健康志向のヨーグルトが好調となり、(1)BtoC事業の売上高は微減に落ち着きました。なお会計基準の変更で数字上は大幅減収となっています。

(3)BtoB事業はやや回復したほか、(4)海外事業はベトナムの乳製品メーカー「Elovi社」を子会社化して増収となりました。全社最終利益は大幅増となっていますが、これは近畿工場跡地や江南ビルを売却したことによる固定資産売却益が寄与しています

 近年の業績は、主力のBtoC事業が伸び悩む一方で海外事業の好調が続き、BtoB事業が増減したことで全社では横ばいとなっている形です。ただしコストカットに成功しているため利益は増加し続けています。

 2023/3期は売上高5200億円予想も原料高によって営業利益は16%落ち込むと予想しています。なお、2025/3期までの中期経営計画では事業の高付加価値化や効率化を進めるとしており、既存商品に糖質オフ、プロテイン増量などの機能を加えた健康系食品や、高栄養価商品を強化する見込みです

“森永ブランド”を確立したアジアに続き、アメリカでは新ブランドで拡大を狙うなど海外展開も積極的です。

健康志向商品で差別化も激しい競争が

株価

 乳業メーカー3社の業績をみていきましたが、いずれも大きく拡大はしておらず、限られた国内市場で伸び悩んでいる様子がうかがえます。人口減少による“牛乳離れ”もさらに進むことから、さらに競争は激化するでしょう。

 こうした状況下で各社は乳酸菌や糖質オフ、プロテイン含有を訴求した健康志向商品で差別化を図ろうとしていますが、既に競争が進んでおり、簡単にはいかないことが予想されます。また、インフレに伴う消費者離れも考えられます。

 国内市場が飽和状態となっているなか、明治HDは医薬品事業、森永乳業は海外事業でどの程度伸ばせるかが業績拡大のカギとなるでしょう。他事業進出に関して雪印はやや出遅れた感じが否めません

<TEXT/経済ライター 山口伸 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー

Twitter:@shin_yamaguchi_

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