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資金50億円が消滅か?上場IT「OKWAVE」がハマった“架空の儲け話”

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新規上場を騙った架空の儲け話をでっち上げか

投資

画像はイメージです

 しかし、ベンチャーキャピタルは新規上場したてで株価が高いうちに売却したいと考えています。Raging Bullはその心理を巧みに汲み取り、儲け話を組み立てました。ところが、実態はオウケイウェイヴが発表している通り、Raging Bullはは契約で定めた投資運用は行っておらず、他の投資者への支払いに充てていました

 これは「ポンジスキーム」と呼ばれ、儲け話に乗ってくれる人がいる間はキャッシュが回りますが、それが途絶えて出金者が多くなるとたちまち資金が尽きて破産します。Raging Bullも同じ轍を踏むこととなりました。

 この1件の闇が深いのは、このRaging Bullからオウケイウェイヴの取締役等が資金の返還を求めて訴訟が提起されているということ。オウケイウェイヴがこの情報を表に出した背景にはファクタ出版の報道があります。

「FACTA」によると、渦中の人は社外取締役の廣瀬光伸氏。廣瀬氏は2010年ごろからRaging Bullへの出資を勧誘するようになり、10%程度の紹介手数料を得るようになりました。オウケイウェイヴも勧誘先の1社だったとみられています。

15億円以上の利益を得た社外取締役の存在が

 2018年7月から2020年4月までオウケイウェイヴの代表取締役社長を務めていたのが松田元氏。松田氏はコールセンター業務を行うアズ株式会社を創業しており、2013年6月に廣瀬光伸氏がアズの社外取締役に就任しています。

 廣瀬氏と松田氏は旧知の仲であり、Raging Bullへの出資の話を通しやすかったものと予想できます。オウケイウェイヴからの出資額が大きくなれば、それだけ廣瀬氏の儲けも膨らみます。34億2900万円の出資で10%の紹介料を得ていたのであれば、3億4000万円が懐に入る計算です。

「FACTA」によれば、紹介手数料として廣瀬氏がRaging Bullから受け取った合計額は15億7000万円にのぼるとみられています。Raging Bullが破産したことにより、投資家主導で介入した弁護士が、廣瀬氏などを相手取り、合計5億円の支払いを求めて提訴しました。

 オウケイウェイヴの代表取締役だった松田氏は、2020年2月から3月にかけて持ち株を大量に売却しています。PKSHA Technologyに事業売却したのは2021年6月。2020年にはこのプロジェクトの全体像がある程度見えていたと考えられますが、松田氏は“一抜けた”と言わんばかりに突如として自社株を手放しました

 一方、オウケイウェイヴは5月16日付のリリースで、Raging Bullについて、「現在の代表取締役社長である福田道夫氏の知人の紹介によってつながりを持ったとし、廣瀬氏が資金運用委託に関して手数料を受け取った事実はないと否認している」と発表しています。オウケイウェイヴ関係者の誰がどこまで何を知っていたのか。巨額詐欺の行方に注目が集まっています。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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