カインズ、“利益率1%以下”の東急ハンズを買収した理由3つ。泥沼業界にくさびを打てるか
出店エリアでバッティングしない
郊外型のカインズと都市型の東急ハンズは、出店エリアでバッティングすることがありません。買収後に顧客の取り合いが起きている店舗の整理をする必要がないのです。既存店舗の集客力が変わらず、退店コストの出費が抑えられることはカインズにとってメリットが高くなります。
カインズは三重県と埼玉県に次世代の大型物流センターを建設し、2023年秋以降に稼働させる計画を立てています。床面積は合計141,900平米の巨大な物流拠点です。この施設はロボットによる自動化で24時間稼働し、効率化を図ります。カインズは物流網の拡大に力を入れています。全国をカバーする物流網は広大で、そこに東急ハンズの物流を統合することで合理化、コスト削減が図れます。
カインズが商機を見出した「文化」
そして3つ目の狙いが最も重要です。カインズはプライベートブランドの商品に注力しており、売上高の40%を自社製品が占めています。一方、東急ハンズは全体の3%程度に留まっています。
東急ハンズはかつて目利きの社員を揃え、店舗ごとに商品を仕入れていました。競わせることでモチベーションを上げ、集客に繋げていたのです。この試みは経営の効率化を進める中で消えてしまいましたが、東急ハンズはナショナルブランドの中・高価格帯の商品を販売する文化が残っています。カインズはここに商機を見出した可能性が高いです。
東急ハンズは利益こそ低いものの、1店舗あたりの売上高は悪くありません。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年3月期の1店舗平均売上高は14億円です。業界平均の8億円を1.8倍上回っています。つまり、高価格帯の商品を求める顧客を集められる土壌があるのです。しかも、商品はナショナルブランドがほとんどを占めています。
そこにカインズのプライベートブランドを陳列することで、販売チャネルがひと息に広げられます。販売数が多くなれば、開発コストが分散されて低くなります。カインズは利益を出しやすくなるのです。