悲惨な業績の旅行業界。星野リゾートは利益半減でも明るい兆し
旅行業界が最大の正念場を迎えています。最大手JTBグループ(以下、JTB)の2021年3月期の売上高は前期比71.1%減の3721億1200万円となりました。1兆2000億円以上あった売上高が3000億円台まで減少したのです。
JTBの純損失は過去最大となる1051億5900万円。2020年3月末時点で1572億1800万円あった純資産は475億2600万円まで減少。これまで積み上げた自己資本1000億円がわずか1年で吹き飛びました。自己資本比率は24.3%から6.9%まで低下し、債務超過ぎりぎりまで追い込まれています。
JTBは東京・天王洲の本社ビルと大阪市中央区のビルを売却。日本政策投資銀行などから300億円を調達することも決まりました。この記事は、新型コロナウイルス感染拡大が旅行業界に与えた影響と、今後どのように回復するかを占う内容です。
中小企業の倒産が後を絶たない状況に
観光庁によると、2021年8月の海外旅行取扱額は、コロナ以前の2019年比2.7%、国内旅行は25.6%となりました。8月は東京オリンピックへの期待感が高かっただけに、旅行業界にとっては絶望的な月となりました。
帝国データバンクの調査では、2021年1月から8月までで倒産した旅行会社数は累計で136件。2020年通年の倒産件数129件をすでに超えています。2021年は200件を超えて、過去最悪となることは間違いありません。
2020年は政府による観光需要支援策「Go To トラベル」で需要が一時的に回復したほか、金融機関の資金繰り支援、持続化給付金で難を逃れた会社が多くありました。
中小企業を中心に倒産するケースも
しかし、2021年は東京オリンピックの無観客化の決定や過去最大の感染者数を記録するなど、コロナ収束の見通しが立たないことから旅行会社の間で諦めムードが広がったと見られています。
7月29日東南アジアに特化した旅行代理店のケイ・アイ・エスインターナショナルが事業を停止。8月18日に観光庁や財団、大学などを中心に航空券・宿泊先の手配などをしていたサイエンスツアーが破産手続きを開始しています。このように中小企業を中心に倒産するケースが後を絶ちません。