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「320万円が突然口座に」人気アニメ会社の“未払い残業代”訴訟、突如終了した背景

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テレワークも違法労働の温床になる恐れ

よんどしい

 会見に同席した総合サポートユニオンの坂倉昇平代表は、今回の訴訟についてこう語る。

「アニメーション業界・映像業界をはじめ、クリエイティブ業界においては、違法な裁量労働制が相次ぎ、長時間労働・残業代不払いの『定額制働かせ放題』になっている。そこにルールを作るべく始めた裁判であったため、裁量労働制の違法性を判断する判決が期待できなくなったのは非常に残念。ただし、会社が未払い残業代を全額支払ったということは、争っても負けると判断したことであり、裁量労働制の違法性を事実上認めたものである。業界の労働条件改善に与える影響は大きいと考える」

 昨今では新型コロナの感染拡大を受けて、テレワークや在宅勤務などの自由な働き方が推奨されている。しかし、「時間にとらわれない働き方」として裁量労働制の性急な対象拡大を求めるのは危ないという。

「ポストコロナの働き方が模索される中で、労働時間を労働者主体で自律的に管理できる制度のはずが、労働者に裁量がないため、長時間労働・残業代不払いの温床になる可能性は高い」(坂倉氏)

 今も「STUDIO 4℃」に勤務するAさんは現在の状況について「会社に行くだけ。アニメーションを作っていくことに関わっていることに変わりはないが、アニメーション制作の仕事は来ていない。遊軍として待機しなさいというような状況で、雑用を与えられている」と語った。

<TEXT/シルバー井荻>

平成生まれの編集者・ライターです。赤羽と阿佐ヶ谷に出没します。ビジネスサイトの編集長もやってました。

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