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千鳥が2019年ブレイクした3つの理由。Amazonの新番組も話題

暮らし

面白いアングルを探し当て、瞬時に笑いに変える力

 最後に挙げたいのが、千鳥の2人の洞察力と、物事の違和感に気付く早さだ。それをなにより感じさせる番組が、昨年4月からスタートした『相席食堂』(ABC)だろう。

 さまざまなタレントが全国各地に出向いてロケを敢行し、食堂やご当地グルメを販売する店先などで知り合った一般人と相席していく。千鳥の2人は、そのロケ映像をスタジオで眺めながら、面白いと感じた箇所で「ちょっと待てぇ!!」ボタンを押して一旦止め、ツッコミを入れながら進行する。内容はシンプルだが、彼らのフィルターを通すことで、魔法のように面白くなるから不思議だ。

 とくに2019年10月22日放送、ピース・又吉直樹の出演回は、“神回”との呼び声も高い。大分県の津久見市保戸島に訪問した又吉さんの前に現れた1人のお爺さん。凄味のある声とたたずまいは、すでに異彩を放っている。それを見てニヤニヤと笑いを浮かべる千鳥の2人。ある会話のなかで、お爺さんの口から「ちーよ」という低いダミ声が響いた。その瞬間、爆笑とともに大悟が映像をストップ。以降は「ちーよ」が注目を集めることになった。

 お爺さんの「ちーよ」は、言葉を発する前に不定期に出てしまうクセのようなもの。これにドハマりした千鳥の2人は「ロングちーよ」「ショートちーよ」など新たな表現を生み出し、“らしさ”全開でイジっていく。さらにお爺さんには、一旦自宅に戻って風呂に入ったうえ、その日、又吉さんにサインしてもらったばかりのYシャツに着替えてしまうようなマイペースさもあった。そのため、たびたびツッコミが入り、爆笑につぐ爆笑を呼んだのだ。

 どんなタレントであっても「千鳥なら面白いアングルを探し当て、瞬時に笑いに変えてくれる」という安心感がある。視聴者は、彼らのフィルターにこそ魅力を感じているのだ。

“後付け”が面白い。Amazonの新番組も注目

千鳥のニッポンハッピーチャンネル

※『千鳥のニッポンハッピーチャンネル』公式サイトより

 最近では、大悟の製作したトレンディドラマや心霊ロケにツッコミを入れる『千鳥のニッポンハッピーチャンネル』(Amazon Prime Video)がスタート。『相席食堂』のスタイルによく似ているが、若干趣向が違っていて別の面白さがある(※以下、ネタバレ注意)

 どう考えても演出の粗さが目立つ大悟が制作した映像に、ゲストは基本的に同調し、ときに過剰な深読みをしてVTRの穴を埋める。その様子を見て、ノブがツッコミを入れるという構造だ。

 とくに第1〜3話のトレンディドラマの回では、その面白さがうまくハマっていた気がする。舞台は、とある企業に新卒入社して間もない同期の男女4人が、恋愛と友情とのあいだで葛藤するベタベタな物語だ。90年代を思わせる主題歌とともに流れるオープニング映像は「バスケットボールをパスし合ってはしゃぐ4人」「青空を切る飛行機」「スローの振り返りショット」など、いかにも“トレンディ”なカットが連続する。

 本編の前半で、主人公・早乙女流星(大悟)が、意中の相手を親友・津田恭平(ダイアン・津田篤宏)にとられて失恋してしまう。ガックリと肩を落とす早乙女。すると、「なぜか左わきを執拗に洗う、津田のシャワーシーン」が何度も差し込まれる。

 これについて大悟は、津田が「左ワキガ」だと解説。続けて、ここでもゲストである又吉が「左ワキガやのに、オフィスで早乙女流星が左側に座っている」と合いの手を入れることで、「恋愛で傷つけられても、津田の左ワキガには決して触れない誠実な早乙女」といった裏設定が浮かび上がっていく。番組は終始この調子で進み、行き過ぎたところでノブがツッコミを入れるという流れだ。VTRを拡大解釈する、“後付け”の面白さを楽しむには最高のコンテンツと言えるだろう。

 2018―2019年の年末年始には、番組20本に出演したとの報道もあった千鳥。その勢いはまだまだ止まりそうもない彼らだが、忙しさで倒れないよう体には十分注意して欲しいものだ。

<TEXT/鈴木旭>

フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中

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