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東大中退ラッパーが体験した「救急患者 2時間たらい回し」の実態

コラム

あの手この手で病院に訴えかける救急隊員

ダースレイダー:隊員の方も慣れていると思うんですよね、こういった事態には。だからあの手この手じゃないけど、どれだけ状況が深刻か、本人がつらそうかっていうことは最大限に説明してくれている。とにかく早く受け入れて欲しいと訴えるんだけど、やっぱり、「はあー、ダメですか、もう何軒も断られているのですけどダメですか」みたいな感じが続いて。

――救急隊員の人は途中で情に訴えるということもしたんですか?

ダースレイダー:何とか受け入れてもらわないとという駆け引きのようなものも感じました。「そこに駆け引き必要なのか」とは思うけど……。

 で、僕も次第にガッカリしてきて、隊員の方も悪いとは思っているから、空きベッドがない、日曜日だから担当の内科の先生がいないっていう理由をその都度説明されました。ただ、「まったく内科が診られる人がいない病院なんてないだろう」っていうのと、「救急病院なんだから何とかしてくれよ」とは思う。

 9年前に脳梗塞になったときに入院していた病院は渋谷のほうにあるんですけど、やっぱりそこに連絡しても、入院していた時期が古いからかやっぱりダメだと。症状事態は一緒の病気と言うか、繋がってはいるはずなんだけども、やっぱ空きがないということで断られちゃって。

“最後の砦”は国立病院

救急車

※画像はイメージです(以下、同じ)

ダースレイダー:他に全部断られた人が最終的に頼む病院っていうのが国立病院で、ここは基本全部受け入れてくれます。ただ、断られているっていう状況じゃないとそこには行けないんだけど、そこは受け入れてくれるでしょう、ということで、救急隊員さんも「最後の砦に頼んでみますよ」と。

 その最後の砦もダメな場合、完全にベッドが埋まって対応できないという場合もあるから「まずはなるべく他に当たってほしい」というのが国立病院側も言っていることなんですけどね。

 最終的に家から30分くらいの距離にある国立病院に搬送されることになりました。で、その前に5件断られているから、救急車に乗ったはいいものの、すでに1時間以上待たされていました。まあ、メンタル的にはきつかったです。救急車を呼んでから救急病棟に着くまでに2時間くらいかかりました。

 妻が一緒に乗ってくれていたので、入院などの手続きは全部してくれました。もしいなかったら、つらい中で全部自分でやらなきゃいけないので、タイミング的には良かったと思います。その後、処置してもらって、やっとちゃんとした病棟に入ったのが、救急車を呼んで5時間後くらい。

受け入れ先の病院が決まらなかった理由

ダースレイダー:適切に進めてもそのくらいかかっちゃうんですよね。受け入れ先が決まるまでに1時間かかったっていうのも、症状によっては1時間でも進行しちゃうのは進行しちゃうし。

 ただ、聞いた話では、ケガなどで目に見えて出血している場合は受け入れがもっとスムーズだと。まずその血を止めないと危険だし、外科っていうのは必要な処置の想像がしやすいけど、内科は中で何が起こっているか調べてみないとわからない。つまり、受け入れた側がこうしなきゃいけないっていう責任が生じると。それは仕事なんだからやってくれよって思うわけだけど、リスク的には高くなる。

 だから、僕みたいな“よくわからなくて吐いている人”ってのは比較的受け入れられないんですよね。

 この話をすると、救急車で同じ体験をした人がかなりいるんですよね。その受け入れ先が精神科だったりすると、担当の人がいないと本当に受け入れてくれないから、何時間も待たされる場合もあるし。

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