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東京メトロと東大、鉄道ワークショップを開催。モーターの歴史を学ぶ

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中野工場で「電車モーター」などを見学

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中野工場で02系第12編成が全般検査中

 中野工場へ入ると、丸ノ内線02系第12編成が全般検査を受けていた。車体は「馬」と呼ばれる台に載せられ、台車は切り離しの上、別の場所へ移っていた。

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2号車の台車に装架された主電動機

 02系は電動車(モーターつきの車両)3両、付随車(モーターなしの車両)3両の6両編成で、前者の台車に主電動機が2台装架されている。台車は1両につき2つ取りつけるので、計4台装架され、電車を動かす力となる。

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台車の部品

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写真の車輪と車軸は、摩擦を小さくするため、ギアケースに油を注ぐ作業を行なう

 台車のほかの部品については分解され、1つひとつ念入りに検査するほか、エアで埃(ほこり)を除去、洗浄し、綺麗な状態に整備する。中野工場には部品用の洗浄機があり、当該編成すべての台車を洗うだけで6時間も要するという。また、大掛かりな検査の場合、台車は1度分解すると、行程ののち車体に取りつけるまで9日間もかかる。

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主電動機の模型

 その後、係員が主電動機の模型を使い、電車を動かす仕組みを説明した。模型の主電動機は2018年まで使われていた直流モーターで、見る限り、営団地下鉄時代の旧式省エネ車両として君臨したチョッパ制御のようだ。

事故の部品も公開。今後の教訓に

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片側の車輪に大きな傷

 特筆すべきなのは、事故の車輪と車軸などを公開したこと。以前、当該台車のギアが回らなくなり、ほかの車両に引っ張られたことで、ピニオンベアリング破損が発生したという。2度とこのような事故が起こらないよう、「しっかり整備しましょう」という意味の教訓として残している。

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銀座線1000系は一般車38編成、特別仕様車2編成の布陣

 02系第12編成の隣では、銀座線1000系第28編成が重要部検査を受けていた。1000系量産車(第2編成以降)は2013年度11編成、2014年度8編成、2015年度11編成、2016年度9編成が増備されており、重要部検査の真っ只中である。

東大生研でモーターを使った実験

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場所を変え、午後の講義へ

 参加者とメディアらは東大生研に移動し、昼食後、午後の前半の講義に臨む。ここで興味深いのは「モータ」という単語だ。記事では「モーター」と書かせているが、東大生研が配布したテキストでは「モータ」を用いている。

 川越准教授によると「JIS(日本産業規格)では単語の語尾に伸ばし棒( ー のこと)を書かないルールがある」という。例えばデーターは「データ」、コンピューターは「コンピュータ」、アクチュエーターは「アクチュエータ」と書く。無論、どちらを書いても問題はない。

 さて、モーターとは、磁力の反発、吸引の力で回転力を生成させるもので、制御用のアクチュエーターとして非常に優れた回転特性を持つ。

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キットを使い、直流電動モーターを回転させる実験

 ここで東大生研が用意したキット(本体、フェライト磁石、リード線)と単1乾電池を使い、直流電源に端子をつなげてコイルを回転させる実験を行なう。+側にN極がセットされると、コイルは時計回りに回転した。

 次は「電車を早く走らせるためには、どうすればよいか?」の考察に入る。

 東大生研は走行時間と電流の関係を調べるため、鉄道模型を用意し、電車が1周するのにかかる時間を低速、中速、高速の順に1人ずつ計測。速さ、電流を測るだけではなく、速さと電流の関係、車輪と電流の関係をグラフにまとめる。

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16000系模型の中間車

 実験に用意された模型車両は、Aグループ02系中間車1両、B・Dグループ16000系中間車1両、Cグループ10000系先頭車+中間車=2両。Cグループを除き、運転台のない中間車が自走するのは、模型ならではのシュールな光景だ。

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キハ110-221の模型モーターを覗く

 実験前には、センターに展示されているキハ110-221(実車はJR東日本のディーゼルカー)の床下機器を参加者に見せる。床下のモーターが動く姿を見てもらうため、台の一部をアクリルにしている。参加者は食い入るような視線でモーターに注目していた。

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実験中の様子

 当初実験時間は30分間の予定だったが、各グループはグラフの作成に手間取り、予定時間を10分オーバーしてレポート発表の運びとなった。

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