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Googleマップはこうして誕生した「地球が、動いてる!」

ビジネス

 今やインフラとしての地位を確立しつつあるGoogleの地図情報サービス。

google map

※画像はイメージです(以下、同じ)

 ナビゲーションとしても使われる「Googleマップ」や、地球上を仮想空間の中で巡れる「Google Earth」などは、日常生活でも多くの人々に重宝されています。

 人々の生活スタイルに劇的な変化を与えるほどの、この発明は、シリコンバレー発の会社キーホールから生まれました。かつて同社でマーケティング・ディレクターを務めていたビル・キルデイ氏の著書『NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生』(TAC出版)より、創業秘話を紹介していきます。

旧友からかかってきた1本の電話

 キーホールが誕生したのは、1999年春にまでさかのぼります。そのきっかけは、本書の著者であるキルデイ氏のもとにかかってきた1本の電話からでした。

 電話の相手は、テキサス大学で共に青春時代を過ごした15年来の仲である起業家のジョン・ハンケ氏。のちに一大ムーブメントを巻き起こす、ARと地図を組み合わせたゲームアプリ「Ingress」や「Pokémon GO」を手がけるナイアンティック社を率いることになった人物です。

 当時、シリコンバレーのスタートアップ企業で働いていたハンケ氏は「見せたいものがあるんだ。寄ってもいいか?」と、キルデイ氏へ連絡をしました。詳しく聞こうとも「自分の目で見ないとダメなものなんだ」と返すハンケ氏。

 大学卒業後は別々の道を歩みつつもビジネスパートナーとして付き合いを続けていた2人でしたが、その夜、ハンケ氏はソフトウェアエンジニアのブライアン・マクレンデン氏と共に、キルデイ氏の自宅を訪れました。

アポロ17号が撮影した地球が動いた

ザ・ブルー・マーブル

宇宙船・アポロ17号から撮影された「ザ・ブルー・マーブル」

 夜の9時ごろ、デル社製のパワーエッジサーバーを携えて、キルデイ氏の自宅を尋ねたハンケ氏とマクレンデン氏。当時を振り返るキルデイ氏は、大がかりな装置を持ってきた2人を前にして「スタートアップの展望が詰まっているのは明らかだった」と回想しています。

 その後、わずかばかりに近況を話し終えたあと、膝の上にキーボードを置いたハンケ氏は、かたわらで巨大なサーバーが機械音を響かせる室内でキルデイ氏にデモンストレーションを見せました。

 モニタに映し出されたのは、鮮明な地球の姿。1972年12月7日、月に向かって打ち上げられた宇宙船・アポロ17号から撮影された、誰もが知る「ザ・ブルー・マーブル」と称される一枚の写真でした。ただ一つ異なったのは、モニタ上で地球儀のように回転しているように見えたことです

 画面を見た瞬間に「地球が、動いてる!」と驚いたキルデイ氏。アナログのネット回線が常識であった当時でも、動画はすでに利用されていました。しかし、動画をさらに動かすというインタラクティブ(双方向)な仕組みが定着していなかった時代では、かなり珍しい技術でした。

 見たことのない技術に感心するキルデイ氏に、ハンケ氏は「ここの住所をもう一度、教えて」と質問しました。それに対して、「465、ジョーセイヤース、オースティン、テキサス」と返したキルデイ氏。データを入力すると、モニタ内の映像が宇宙空間から地表へとズームされていき、15秒後には今まさに3人が集まっているキルデイ氏の自宅が映し出されました。

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