売上高2兆円!三菱、住友を遥かにしのぐ「大手化学メーカー」の“稼ぐ力”
価格競争力が強かった理由
塩ビは構造が単純で、生産設備を設けられる企業であれば、参入はさほど難しいものではありません。他社製品と機能面での差別化が図りづらく、価格競争力がモノをいう世界です。
塩ビの製造は、二塩化エチレンを熱分解して塩ビモノマー(VCM)を作り、そこから塩ビ樹脂(PVC)を生産します。金川氏はアメリカの世界最大級の化学メーカーであるダウ・ケミカルとの親交を深めており、PVCの事業化を勧められていました。
シンテックはダウ・ケミカルと提携し、VCMをダウ、PVCをシンテックが受け持つという分業制をとります。そして、PVCの販売価格が落ちたらその損失分をダウとシンテックで折半するという痛み分けの約束をしました。すなわち、シンテックは価格をあまり気にすることなく顧客開拓ができ、価格競争力が強かったのです。
2兆円の売上高を達成した要因
また、過剰供給は時に価格の暴落を招きますが、ダウ・ケミカルとの共存関係があったため、シンテックの工場はそれを恐れずにフル稼働させることができました。1990年に生産能力は90万トンを超え、シンテックはアメリカでのシェアトップに躍り出ます。
シェアトップを狙うという信越化学工業の経営戦略は、売上高伸び悩みの突破口を開きました。信越化学工業が2兆円の売上高を達成した要因に値上げがあります。
2021年7月に塩ビ樹脂1kg当たり10円の値上げを実施。同年11月に1kg当たり40円、2022年4月にも1kg当たり35円の値上げを行っています。また、もう1つの主力製品であるシリコンも全製品10%引き上げました。