JR列車初の防犯カメラが内蔵された新幹線は?否定的な声の中で狙いは
九州新幹線ならではのこだわりとは?
黒を生かしたエントランスを入ると、デッキにある洗面所の仕切りに目が奪われるだろう。通常ならばカーテンが据え付けられている部分に、縄のれんがかけられているからだ。この縄のれんは、熊本県八代平野で生産されたイグサを束ねてつくっており、地元の素材で乗客を迎えている。
客室の壁板には、鹿児島県産のクスノキが用いられている。近未来的な乗り物というイメージのある新幹線に木材が用いられているとは、どこか不思議な印象である。壁板だけではない。座席を見渡すと、木材がふんだんに利用されていることに驚かされるだろう。シートの背もたれ、ひじ掛け、そしてテーブルが木でできており、しかも曲線美が生かされた温かみのあるデザインに仕上がっている。
また、座席に張られている布は西陣織の技法を用いたもの、ブラインドはサクラ材を使ったすだれ風と、「和一色」の空間で演出されている。800系のデザインを手がけた水戸岡鋭二氏の著書『ぼくは「つばめ」のデザイナー』によると、この大胆なデザインが採用された理由のひとつに、2004年に先行営業した新八代~鹿児島中央間が、なんと区間の70パーセントがトンネルのなかという特殊な事情にある。
トンネルの中で窓の外を見ても真っ暗なばかりで、乗客は風景を楽しめない。ならば、客室の中で思う存分リラックスしてもらおうと、検討を重ねた結果のデザインなのだそうだ。
<TEXT/レイルウェイ研究会>