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ドン・キホーテ製、2万円台〜のネット動画専用テレビ。バズっても“売る気がない”陳列のなぜ

ビジネス

ドンキと西友、商品陳列は大きく異なる

 顧客の意見を重視する、という点で共通する両社。しかし、商品の陳列方法は、まったく異なります。

 西友はPB特設コーナーを設置。全面で安さと品質を訴求します。一方、ドンキはPB製品を、あえて「埋没化」させているようなふしがあります。筆者が訪店したドンキは、前述のPBスマートテレビを、ごちゃついた目立たない場所に設置。電源すら入れていません。「売る気がないのか?」と思うほど。

 そのため、上の棚にあるナショナルブランド製品に目が行ってしまう。キレイな画質の43型4Kテレビ。PBスマートテレビとの価格差はわずか5000円ほど。

「普通のテレビでもこれだけ安いなら、こっちのほうがいいかなぁ」そう思わされてしまいました。これが、ドンキの得意とする「圧縮陳列」の効果です。ごちゃごちゃの陳列によって、別の商品にも目を向けさせ、より高い製品へのシフトや衝動買いを誘発させる。こういった仕組みが、店内のあらゆるところに見られます。

圧縮陳列の迷宮

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 届かないところにある、知らないメーカーのスナック菓子。目の前に吊り下がる、異色のチョコレート。ごちゃごちゃの店内でお目当ての商品を探すうち、これ美味しそう。あれ面白い。脱線してしまったり、衝動買いしてしまったり。一見、非効率的に見える圧縮陳列。実は、熟考されたものです

 衝動買いや、ついで買いなどを「非計画購買」といいます。非計画購買が買い物に占める割合は「5~9割」。だったら、非計画購買に注力したほうが、はるかに儲かる。非計画購買に有効なのが「圧縮陳列」なのです。

 一般的な小売では陳列に「視認率」という指標を用います。来店者数のうち、その商品を認知した人がどれくらいいたかを表す指標です。この視認率を用い、来店客にわかりやすい陳列になるよう工夫します。

 ドンキ創業者の安田隆夫氏は「ある程度のわかりやすさは必要」としながらも、「『わかった感』を与えると、次から必要なものがないかぎり来店してくれない」と述べています(安田氏の著書『情熱商人』より)。

「今日は商品を全部見きれなかった」「近いうちにまた来たい」。この感覚を、安田氏は「後ろ髪引かれ感」と呼びます。「わかった感」は与えない。「後ろ髪引かれ感」を与える。これが、来店頻度を高め、非計画購買を増加させるのです。

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