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コロナ禍で危機の劇場を「配信で支える」。ベルリン銀熊賞受賞Pに聞く、仕事のこだわり

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配信で劇場を支える

偶然と想像

©2021 NEOPA / fictive

――今回は「Reel」という新しい配信プラットフォームで、劇場公開期間限定で有料配信を行い、配信手数料を差し引き、通常の映画興行と同様に配給と劇場とで分配する取り組みを始めると聞きました。

高田:昨年の4月、「ミニシアター・エイド」という、集めた寄付金を全国の劇場に分配してコロナ禍で危機に瀕した劇場をサポートするプロジェクトが、深田晃司監督と濱口監督を発起人として、大高健志さん、岡本英之さんとともに立ち上がりました。

 ミニシアター・エイドにはリターンとしてプロジェクトに賛同した監督の作品を見ることのできる「Thanks Theater」という配信視聴環境もありました。

 弊社もミニシアター・エイドの事務局に、今回のReelの配信元になるInclineというIT会社のユニットとして参加していましたが、Thanks Theaterのプラットフォーム作りをしたInclineメンバーの「ねこじゃらし」さんに、それを作り直しもらってReelにしようということになったんです。

上映と配信を相補的なものに

高田:ミニシアター・エイドは約3億円3000万円を集めましたが、その時に映画ファンの気持ちが見える形になると経済的にも大きな力になるということを知りました。

 あのプロジェクトはコロナ禍を乗り切るための1度限りのクラウドファンディングでしたが、持続的な映画環境のために動画配信とも向き合っていかなくてはならないと思ったんです。ミニシアター・エイドの発起人でもあった濱口監督ともこの問題意識をよく共有した上で、実施することにしました。

「Reel」はヴァーチャル・スクリーンとして、「上映館」のひとつと常に考えます。その収益は、その週に上映いただいている各劇場にも配分します。このことで上映と配信を二項対立ではなく、相補的なものにする流れを生んでいけたらと考えています。

 また、Inclineで、2022年1月に下北沢に新しく「K2」という映画館を立ち上げます。私たちは5社1体となって映画やアートをプロデュースする団体ですが、文化のインフラ作りにも挑戦しています。

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