バルミューダフォンに早くも暗雲。過去のKDDIの失敗に見る“デザイン携帯”の難しさ
バルミューダ全体の価値を失わないか
バルミューダには高いブランド価値があります。ブランドには、「同スペックの製品でも、他社より高い価格で購入させる効果(価格プレミアム効果)」があります。では、バルミューダの価格プレミアム効果はどれくらいあるのか。
「通常価格の7倍」というデータがあります。2010年に、日経デザイン(株式会社日経BPマーケティング)が行ったアンケートです(『バルミューダ奇跡のデザイン経営』(日経BP)2015年刊より)。
これは、バルミューダの扇風機(The Green Fan)を見せ、扇風機の通常価格を5000円とし、「この扇風機(The Green Fan)がいくらなら欲しいか」を調査したものです。結果は、「通常の7倍(3万5000円)より高くても買う」を選んだ回答者が6.9%(9/131人)いる、というものでした。バルミューダの高いブランド価値を裏付けています。
価格プレミアム効果は、決算値にも表れています。バルミューダの営業利益率は10.5%(2020年12月期)。製品ラインナップで類似する、ツインバード工業株式会社の4.9%(2021年2月期)をはるかに上回ります。
高いブランド価値を持つバルミューダ。問題は、そのブランド価値を「雑」に扱っているようにみえることです。
発表会見は寺尾社長が行うべきだった?
バルミューダは、今回のスマートフォン販売のため別ブランド「BALMUDA Technologies」を立ち上げました。これは、衣料メーカーがよく使う「マルチブランド戦略」です。
有名なのはアルマーニでしょう。アルマーニはメインブランド(ジョルジオ・アルマーニなど)と別に、エンポリオ・アルマーニなど廉価ブランドを使い分けています。メリットは、新ブランドのビジネスが失敗しても、メインブランドの価値が低下しないことです。
しかし、今回のバルミューダフォンの製品発表会見を、寺尾社長自身が行ってしまった。その結果、「BALMUDA Technologies」は「バルミューダ」ブランドと「同じもの」と印象付けてしまった。せっかく、「別」ブランドを立ち上げたにもかかわらず、です。
もし、バルミューダフォンが失敗したら、「バルミューダ」全体のブランド価値が低下することになります。現在、他社より高く設定している、トースターや扇風機などの価格が維持できなくなるかもしれません。好調な利益が減少してしまうかもしれません。バルミューダフォンの成否は、バルミューダ全体に大きく影響するのです。