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アシックスの売上はシューズが8割。大手スポーツメーカーの“意外な強み”

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海外勢が圧倒的のなか、ヨネックスの戦略は?

ヨネックス

©Zhukovsky

 モノづくりの得意な日本らしい会社といえば、ラケットを製造するヨネックスは外せません。テニスの大坂なおみ選手も使っているヨネックスのラケットは、数少ない日本のブランドです。

 テニスラケットは王者ノバク・ジョコビッチ選手がヘッド、錦織圭選手がWilsonを使用しており、海外勢が圧倒的なシェアを獲得しています。ヨネックスのテニスラケットのシェアはわずか4%。しかし、そのシェアを獲得する道は決して平たんなものではありませんでした。

 ヨネックスはもともとバドミントンのラケットを製造するメーカーでした。その加工技術を活かしてテニスやゴルフクラブなどの製造もするようになったのです。テニスラケットを世に知らしめるため、有名選手との契約に漕ぎつけたかったヨネックス。目をつけたのは、テニス界最高の偉人と呼ばれるビリー・ジーン・キング選手でした。しかし、世間的な認知のないヨネックスのラケットに関心はなく、門前払いとなりました。

 その悔しさをバネにラケットの改良を重ね、キング選手のもとを何度も訪ねたといいます。根負けしたキング選手は渡されたラケット対する感想や課題を出し、それを解決するというサイクルを繰り返しました。やがて契約へと至るのです。

競技人口の多い中国やインドでシェア獲得

ヨネックス

 キング選手を通して、マルチナ・ナブラチロワ選手との契約も獲得しました。ナブラチロワ選手はウィンブルドン選手権大会史上最多優勝記録を残すなど、圧倒的な強さを見せつけました。その活躍を支えたヨネックスのラケットが、一般の人々にも認知されるようになったのです。

 ヨネックスの2021年3月期の売上高は前期比16.8%減の515億5400万円、営業利益は同57.4%減の10億3200万円でした。やはり、コロナの自粛を受けて業績は悪化しています。しかし、2022年3月期の売上高は630億円と予想しています。ワクチン接種が進んでスポーツ活動が戻るという強気の予想を出しました。

 テニスで有名なヨネックスですが、業績はバドミントン用品に支えられています。2021年3月期のバドミントン用品の売上高は288億3600万円で全体の55.9%を占めています。テニス用品は74億600万円で、構成比率は14.4%です。

 ヨネックスはバドミントンの競技人口が多い中国やインドを果敢に攻め、順調にシェアを獲得しています。マーケティングの力だけでなく、機能性で選手やファンとの信頼関係を結ぶことができるかどうか。それが何よりも大切な戦略になることを歴史が語っています。

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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