“競技経験ゼロ”の武井壮が「フェンシング協会会長」になったワケ
自身をメジャー化した経験をフェンシングに
日本のフェンシングの競技人口は2019年で約6000人。2大会連続でメダルを獲得した競技でありながら、競技人口はマイナー競技の域を出ない。武井氏もまた、十種競技の日本チャンピオンになった際に新聞の端に小さくしか取り扱われず、マイナー競技の現実を痛感した過去がある。
「タレントもアスリートも同じ構造だと思っているんです。自分の価値を高め、取材や番組出演で認知され、応援してもらえる人の数を増やしていくことが重要。例えば街頭でフェンシング選手の写真を見せたときに名前と顔が一致する人ってほぼいないと思うんですよ。
スポーツをエンターテインメントとしてビジネス化するには、非常に脆弱な状態であると言わざるを得ない。スポーツをやっているだけで価値があるわけではなく、スポーツをやっている自分を見せて、そこに行き着くストーリーに共感してもらって価値を高めていくことが必要です。
フェンシングに出資するとメリットがある環境を築くことができれば、それが結果的に競技人口の増加にも繫がるだろうし、フェンシング界が成長する近道であると考えています。
その分、人から注目される苦労やストレスは増えますが、選手たちがそれでもやりたいと思うなら私にできることは少なからずあると思えました。10年前、世の中にまるで知られていなかった武井壮という存在をメジャーにした経験とノウハウがありますから」
こういったミーティングを重ね、選手からも「武井新会長」を待望する声は高まり、信任を得て会長へ就任することになった。
武井壮だからできるフェンシング企画
一方、スポーツ経験は豊富なものの、フェンシング経験がないことで、世間からは「話題づくり」といった否定的な声もあった。
「僕はタレントなのでメディアに取り上げてもらうことが仕事です。その数は多ければ多いほうがいいと感じています。もし会長の後任がフェンシング関係者だった場合、こういった取材が入ることもなかったでしょう。僕の就任でフェンシングという言葉を聞く人の数が少しでも増えたならば、すでに価値のあることだと思います」
フェンシングのメジャー化のため、芸能活動で培った発信力を生かしたいとも考えているという。
「スポーツ界、芸能界と広い人脈があるので、例えば『はじめてのフェンシング』『フェンシングの世界チャンピオンと剣道の達人で戦わせるとどっちが強いか?』といった企画をオファーすることもできる。ほかにも子供たちが熱狂するコンテンツをつくるためにプロジェクトも準備しています。誰よりも幅広くフェンシングを広められると自負しているので、どんな化学反応が起きるのか楽しみです」