飲食未経験から“ほぼ独学”で「食べログ百名店」のカレー屋になった元営業マンの哲学
たまたま出会った本がきっかけでカレーにハマる
――カレーに目覚めたのはいつからですか?
安川:カレー研究家・水野仁輔さんの「カレーの教科書」という本に出会ったことがはじまり。2013年です。当時働いていた会社がアメリカの調理家電のブランドで、付き合いのある人たちがプロの料理人や料理研究家の人が多くて、水野さんとも知り合うことになったんですよ。
すると水野さんから「カレーの教科書」の出版イベントに直々に誘われまして、行ってみると、ルーで作らないカレーの世界に「なんじゃこりゃ!」と、ものすごい衝撃を受けまして。結果、見事にハマってしまいました(笑)。
――じゃあ、水野さんが人生を変えちゃったんですね!
安川:そうなんですよ。水野さんにこの話をすると複雑なカンジになるんですよ。「いやいや、ボクそんな責任とれません」って(笑)。
最初の2年間は鳴かず飛ばずだった
――会社員一筋で生きてきた安川さんですが、飲食の世界に惹かれていったのはどういうところですか。
安川:サラリーマン時代にモヤモヤしていたのが、日本の流通はいくら良いモノや売りたいモノがあっても、代理店や卸が商品の良し悪し以外のことでその商品を扱わないとなると、お客さんが欲しがっても売ることができないところ。
だから小売店まで行って、自分で商品を納品してお客さんに直接伝えて売っていたりしたんですよ。お客さんと直接やりとりをして、商品を気に入って買ってくれることが嬉しかったんですよね。
飲食の世界はそれに近いものがあると感じていて、店主が作った料理をお客さんが直接食べに来る。マズかったら2度と来ないし、美味しかったら何度でもリピートしてくれる。サラリーマンにはないイエスかノーかの世界なので、そこにすごく惹かれていきました。
――2015年9月に「咖喱人」(カリービト)が誕生。飲食業界を経験しないまま始めましたが、思い描いていた世界とは違いましたか?
安川:全く違いましたね。一言でいうと、自分の考えがあまりにも甘かった。正直、お客さんがもっと来てくれると思っていたんですけど、それが全く上手くいかず……。最初の2年間は鳴かず飛ばずで、自分の甘さを痛感した2年でした。