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“暗黙のルール”を破り続けた安倍政権。「歴史が判断する」の真意<ダースレイダー>

ビジネス

「書いてなければやってもいい」

 これを、安倍政権になってから守らなくなった。そしてこれが分断を生んでいます。相手の話を聞かなくていいと。実質としてどれほど伴っていたかはさておき、かつては野党の意見を聞く姿勢はあった。これをしなくなったのは、安倍政権のもっとも大きいポイントだったと思います。そして内閣人事局という人事権を掌握することにより、官僚に圧力をかけ、言うことを聞かせる。

 非常に権威主義的で強権的な政権であると同時に、権威主義でありながら、相手の話はまったく聞かないという。これが、例えばかつての“自民党の権威主義”的な、田中角栄的あり方だったら、与野党問わずさまざまな意見が出ることによって、自分の知見が深まっていくというスタンスを取れていたのが、安倍政権になってからは、人事権も握って、それをを元に言うことを聞かせていくというスタンスに変わりました。

 この「書いてないことはなんでもやっていいんだ」というスタンスが、日本社会にどういった影響を及ぼすのか。これこそが、のちの歴史が判断することだと思います。

かつての正しい判断が安倍政権で一転

ダースレイダー

ダースレイダーさん

 内閣人事局が設置された2014年当時は、縦割り行政の弊害を乗り越えるために、各省庁の人事権を一点に集めるという発想がありました。ところが、人事権を握る人がどんな人かによって、制度そのもののあり方が変わってしまうということが想定されていなかった。つまり、当時正しいと思った判断でも、実はのちに違った結果に結びついてくる。

 衆議院の選挙制度も、政権交代が容易な二大政党制を作ろうと思って中選挙区制をやめた。そして、金権政治や地元の地盤を固める政治をなくしていくため、政党助成金を取り入れて、1992年に小選挙区制を導入した。

 これによって、政権交代が頻繁に起こる前提での効率化が図られたはずが、政権交代が起こらず、そして政党助成金によって、各政治家が、政党に首根っこを押さえられてしまう。政党の言うことを聞かないと、選挙の公認すらも得られない。それが得られなかったら、ただの人になってしまう。

 直近では、6月18日に逮捕された参議院議員・河井案里さんに自民党から1億5000万円が資金提供され、同じ広島選挙区から出て落選した溝手顕正さんには1500万円しか出なかったと。そういうことが行われるようになった結果、河井議員をめぐるさまざまな疑惑、事件が起こってしまった。つまり、選挙制度の変換という当時正しいと思われていた判断が、実は間違っていたかもしれないということを明らかにしたのも、安倍政権のある種のレガシーであると思います

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